企業講義レビュー(トレンド体験)

第5期

肌のたるみやゴワつきの原因!
一度起こると元に戻りにくい「糖化」から肌を守る

テーマ:「話題のエイジングケアブランド『B.A』と背景にある最新美容理論を学ぶ」

講師:
ポーラ化成工業 主任研究員
多田明弘さん

多田明弘さん

 第一線の研究者やマーケティング責任者など、健康美容分野で存在感のある企業で活躍する方々にご登壇いただく健康美容情報認定講座の「トレンド体験」。
 第5期のテーマは、今、最も注目を集めるエイジングケア“抗糖化”にスポットを当てました。

 講師は、「糖化ケア」ブームに火をつけたポーラの最高峰エイジングケアブランド『B.A』シリーズの開発に携わる多田明弘さん。多田さんは、日本における肌の糖化研究の第一人者でもあります。講義は、糖化とは何かという話から始まり、それが肌に与えるダメージと解決のためのアプローチに進みます。さらに、研究をベースに開発された『B.A』シリーズで、どのように効能評価を行ったか、マーケティングやブランディング戦略はどう展開したか、といった点に至るまで、トータルな解説が行われました。
では、多田さんの講義を通じ、糖化のメカニズムや最新の糖化ケア化粧品事情を学んでいきましょう。

肌のハリ、弾力、なめらかさを奪う糖化

 「糖化とは、たんぱく質と糖が結びついて起こる現象です。肌だけでなく体のいたるところで起き、また、私たちが口にする食品でも起きています」と、多田さんは解説します。例えば、肉を焼くと表面が焦げて茶色くなり、固くなるのは糖化現象。茶色く焼けたトーストでも糖化が起きています。
 これが肌で起こるとどうなるのでしょう。「肌の若々しさを保つコラーゲンもエラスチンも、たんぱく質でできています。これらが糖と結びつくと固くなり、弾力性、柔軟性が低下して皮膚がたるんだり、ゴワついたりすることに。さらに、糖化によってできる糖化最終生成物AGEs(Advanced Glycation End products:エージーイー)には「褐色化する」という特徴があり、これが肌にたまると黄ぐすみの原因となって、見た目の印象を老けさせてしまいます。美白ケアをしてもとれない肌のくすみ、それはメラニンのせいではなく、糖化によるものです」。

実験結果を通じて糖化を再現

 ここで、多田さんは、糖化の理解を助ける実験を紹介してくれました。
 ひとつめは褐色化実験。「真皮を構成するコラーゲンで溶液をつくり、砂糖を入れ、体温と同じ37℃の環境におきます。すると溶液は2カ月で褐色化し、3年で真っ黒になってしまいます。ただ砂糖を入れるだけで、このような変化が起こります」。
 別の実験では、コラーゲンを入れた寒天(コラーゲンゲル)を作り、そこに砂糖を入れたものと入れないもので、固さの変化を比較。「砂糖なしのものは、簡単につぶれます。つまり柔らかいということ。一方、砂糖を加えたものは固くなり、つぶれません。試験管内の実験ではありますが、砂糖を入れるだけでコラーゲンが固くなることが確認されました」。
「実際に女性の肌真皮のAGEs量を調べると、AGEsの多い人の方がくすみが多く、弾力性が低いだけでなく、皮膚が固く見えることも分かりました。一方、AGEsの少ない人の肌は明るく透明感があり、柔らかく、若々しく見えます」。

一度できてしまったAGEsは分解されない?!

 さらにAGEsにはやっかいな特徴が。「ヒトはAGEsを分解する酵素を持たないため、一度できるとそのまま体内に蓄積され、なかなか排出されないのです」と多田さん。このような性質から、古くから糖化研究は世界中で進んでいたものの、研究の重点は、糖化を体内で起こらないようにする「予防」に置かれていました。
 そこで多田さんは、「糖化により蓄積されたAGEs量を減少または除去することにより、肌を改善=抗糖化できないか」というアプローチへの挑戦を開始。ハリと透明感がある滑らかな肌を取り戻すために、できてしまったAGEsを除去するという課題に取り組み始めたのです。

AGEsの分子を小さく切断し、排泄させる試み

 「分子が大きいこともAGEsの代謝を難しくしている一因です。ということは、切断して小さくすることにより、ターンオーバーやリンパの流れで排出できるようになるのではと考えました」。
 「まず、AGEsを切断する成分を見つけ出すために、128種類の成分を検証し、そのうち5つの成分にAGEs切断作用があることを発見しました。その中で最も効果の高かったのがヨモギ。ここから有用成分を特定し、YACエキスと命名。糖分を添加したコラーゲンゲルにYACエキスを加えると、2週間でAGEsが減少することを確認しました。蓄積されたAGEsを除去し、糖化がすでに進んだ真皮の状態を『元に戻す』可能性が示唆されたのです」。

年齢と関係なく、しかも短時間で進行する「角層の糖化」を解明

 さらにポーラは「真皮だけではなく、角層も糖化する」ことを新発見。真皮のAGEs量が柔軟性の低下や黄ぐすみに影響するのに対し、角層のAGEsは粘弾性(押すと元に戻ろうとする力)と相関関係があり、肌のゴワつきなどの原因になることを確認しました。
 「しかも、真皮ではAGEs量が年齢とともに増えるのに対し、角層の糖化は年齢と関係なく、誰にでも起こることが分かりました。20代でAGEs量が多い人もいれば、50代で少ない人もいるのです。また、角層の糖化は、紫外線や熱により、分単位というきわめて短時間で進行することも分かりました。こうした角層のAGEs除去に効果が高い成分にはレンゲソウ由来エキス(EGクリアエキス)があります」。

糖化に着目したポーラの『B.A』シリーズ

 ここまでは、糖化研究の最前線についての講義。
 講義の最後には、『日経ヘルス』前編集長で健康美容情報認定講座の講師を務める西沢邦浩さんが参加。「以前からキーワードとなっている酸化に関しては、ミトコンドリアがエネルギーを生産するたびに必ず生みだすのが活性酸素なので、私たちの体にも除去する仕組みがあります。ところが糖化については、人類の歴史で体の中で余るほど糖分を摂取できた時期は最近までないため、抗糖化の仕組みは必要なかったのではないかと考えられます。つまり糖化とは、食生活が豊かになったために顕在化した現象なのかも」と話します。
さらに、体の中からも糖化にアプローチするために、ドリンクとサプリメントも発売。「2種類のエキス、4種類のハーブなどを配合した健康食品『B.A ザ リキッド』と『B.A ザ タブレット』を開発しました。糖化ケアでは、体内から肌に働きかけるインナーエイジングケアも重要です」。

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糖化は、食が豊かになった現代ならではの現象?

 講義の最後には、『日経ヘルス』前編集長で健康美容情報認定講座の講師を務める西沢邦浩さんが参加。「以前からキーワードとなっている酸化に関しては、ミトコンドリアがエネルギーを生産するたびに必ず生みだすのが活性酸素なので、私たちの体にも除去する仕組みがあります。ところが糖化については、人類の歴史で体の中で余るほど糖分を摂取できた時期は最近までないため、抗糖化の仕組みは必要なかったのではないかと考えられます。つまり糖化とは、食生活が豊かになったために顕在化した現象なのかも」と話します。
 糖化は、医学界でも注目のキーワード。アンチエイジング界で活躍するドクターを中心に糖化ストレス研究会が旗揚げされ、本格的な研究がはじまるという状況も紹介されました。

「糖化に気付く前」の早めのケアで、アンチエイジング効果もアップ

 質疑応答では受講生から質問が活発に飛び交い、糖化ケアや、ポーラの最高峰ブランド『B.A』シリーズへの関心の高さがひしひしと伝わってきました。
 「角層はターンオーバーで生まれ変わるイメージがあり、AGEsは放っておいてもなくなるのでは?」という受講生の問いに、「角層の下の方はAGEs量は少ないのですが、徐々に上にいくほど増えます。確かに、ピーリングで角層を剥がせばよいという考え方もありますが、まずは毎日のお手入れでケアすることを考えるのがよいと思います」と多田さん。

 『B.A』シリーズのラインナップでは「商品の設計上、機能性の高い成分が濃縮されているのはクリーム。高価ですが、肌に一番効果的だと思う」と耳寄りな情報も。また、糖化ケアは予防を兼ねて早い時期に始めるのが効果的で、糖化が自覚できるほど進んでからでは、それなりに回復に時間もかかるとのこと。

 講義前に配布された『B.A』シリーズのミニチュアを手に、受講生たちの糖化ケアへの期待・関心は高まるばかり。糖化というアンジエイジングの新潮流への理解を深めた貴重な時間となりました。
(益戸佳那子=健康美容コミュニケーター第2期生)

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