企業講義レビュー(トレンド体験)

第1期 vol2

解明進む、日本を代表する健康食材、大豆のパワー
効かせるコツは「腸内細菌」と「和の食材」にあり

 大豆には大豆イソフラボン、大豆たんぱく質などの栄養成分が含まれ、近年の研究で、肥満や骨の老化、生活習慣病などに対する効果も明らかになってきています。  『日経ヘルス』『日経ヘルス プルミエ』では、日本人の食生活と健康を支えてきた食材として大豆に着目、さまざまなエビデンスとともに、大豆パワーを紹介してきました。健康美容情報認定講座「健康コミュニケーターコース(第1期)」の中の講義「トレンド体験」では、大豆製品開発に力を注ぐ大塚製薬による講演に引き続き、両誌の前編集長であり、「大豆は日本人の健康の源の一つ」と言い続けてきた西沢邦浩さんが、大豆の最新研究トレンドを紹介しました。

子供の時の摂取量が将来の乳がんリスクを左右?!

 「最近の研究で大豆には、乳がんや骨粗しょう症の予防、更年期症状の改善、美肌効果など、女性にうれしい様々な健康・美容効果が確認されています。例えば、大豆の摂取習慣と乳がんとの関係では、11歳までの子供の時期に大豆を多く食べると、特に将来の乳がん発症リスクが低く抑えられるという結果が出ています」。
 この研究は、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ハワイに在住する20〜55歳の日本人、中国人、フィリピン人女性を対象に行われ、生涯における大豆摂取タイミング、摂取量と乳がんの発症との関連を検討したもの。その結果、児童期(5〜11歳)の大豆摂取量が中頻度(週1〜1.5回)、高頻度(週1.5回以上)の場合、大人になってからの乳がん発症リスクが、低頻度(週1回以下)と比べ、有意に低かったのです(図1。データ:Cancer Epidemiol Biomarkers Prev; 18(4), 2050-9, 2009)。

 「また、岐阜県高山市に在住する35〜54歳の更年期前女性1106人を対象に、大豆摂取量とホットフラッシュの関係を検討した研究では、大豆摂取量が 1日当たり平均115.9gある群(摂取量が多い群)では、44.5gの群と比べ、ホットフラッシュの発症リスクが有意に低いという結果が出ています」(図2。データ:Am J Epidemiol; 153(8), 790-3, 2001)。

 このほか、肌のシワ、ハリの改善効果、骨粗しょう症の予防効果など、多彩な効果が報告されており、いずれもイソフラボンの女性ホルモン様作用が関連していると考えられていると話します。

図1:子供の時の大豆摂取量が将来の乳がん発症リスクを左右

図1:子供の時の大豆摂取量が将来の乳がん発症リスクを左右

図2:大豆の摂取が多いとホットフラッシュの発症リスクが低下

図2:大豆の摂取が多いとホットフラッシュの発症リスクが低下

エクオール産生に関与する「腸内細菌」と「和の食材」

 このように健康と美容の“万能食材”として期待される大豆ですが、より効かせるためのキーワードがあると西沢さんは言います。それが、「腸内細菌」と「和の食材」です。
 「ある種の腸内細菌は、イソフラボンの一種、ダイゼインからエクオールという成分を作り出します。エクオールは、イソフラボン以上に女性ホルモンに近い作用を持ち、更年期の諸症状の改善に関与する主な物質として注目されています。ただし、誰もがエクオールを産生する腸内細菌を持っているわけではありません。エクオールが産生できる人は、中高年の日本人女性の約55%、若い女性では20〜30%というデータがあります」。

 では、どのようにしてエクオールの産生を高めていけばいいのか? 現在、エクオールの産生を高める腸内細菌や食材・成分の探索は盛んに進められている最中とのこと。
 「食材・成分で注目されているのが、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、食物繊維、魚油です。フラクトオリゴ糖は、ゴボウやタマネギに多い成分。また、マウスの試験で大豆と魚油(DHA)を一緒にとるとエクオールの産生が高まることが報告されています。根菜類、大豆や魚など、古くから日本人が食してきた “和の食材”が、大豆を効かせるためのカギになりそうです」。

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