企業講義レビュー(トレンド体験)

第3期

光老化、酸化、糖化…… 肌悩みの原因と対策を医学的に研究
製薬メーカーならではの“安全で効くスキンケア”とは

テーマ: 「エビデンスに基づいたスキンケア」

講師:
ロート製薬 研究開発本部
製品開発部 部長
力石正子さん

力石正子さん

 2011年で初めての開催となる健康美容情報認定講座第3期「トレンド体験」(1月29日に実施)では、「エビデンスに基づくスキンケア」に焦点を当てました。ビューティー、中でもスキンケアは、女性にとって大きな関心事。
 一方で、化粧品類のパッケージや広告を見ても、科学的根拠や効き目がよく分からないことも多いのでは? それもそのはず。化粧品の効果効能に関する表現は、薬事法によって制限されており、配合成分やそれを含む化粧品の美肌効果についてエビデンスを得ていても、商品とともに公表できるデータはほとんどないのが現状だからです。
 そこで、第3期のトレンド体験では、化粧品の機能性にスポットライトを当て、最新のトレンドや注目の美容成分、スキンケア方法について、具体的な製品を交えながら考えていきました。
 講師は、スキンケアを科学し、エビデンス重視の化粧品開発を行うロート製薬の製品開発部部長の力石正子さん。同社のスキンケア商品開発の陣頭指揮を執る方です。講義の中で「Obagi(オバジ)」、「エピステーム」、「肌研(ハダラボ)」といった人気の機能性化粧品を、実際に試して理解を深めるとともに、一人ずつ、肌測定器による潤いや皮脂の状態チェックを受けました。

 では早速、“効く化粧品”の世界を覗いてみましょう。

寿命が延長し、高まるスキンケア意識

 「医療の進歩や栄養状況の改善により、女性の平均寿命はこの50年で約30年も延長しました。人生50年というのは遠い過去の話になり、現在では、50歳以降もキレイに、美しく年齢を重ねたいという女性が増えてきています。特に、スキンケアに対するニーズは、60代、70代の方でも衰えません」。
 まず、力石さんは、年齢にかかわらず高まる女性の美しさへのニーズに触れ、肌に訪れる具体的な加齢変化を説明していきます。この説明に用いられたのが、「若い女性の顔をベースに、様々な年代の人のパーツを組み合わせてコンピューターで合成した」という加齢変化の顔写真。合成とはいえ、20代のきれいな女性が年を重ねるごとに“老化”していくリアルな変化に、受講生からは驚きの声が上がります。
 「私たちは、生まれたばかりの時は“ぷりんぷりん”の肌を持っていて、20代くらいまではつやも透明感もありますが、30代前後で目のクマやくすみが少し目立つようになります。40代になると、透明感がなくなりシミが目立つようになります。50代では口角が落ちてきて、60代ではほうれい線も目立ってきます」。

秋田の女性は鹿児島の女性より20歳も肌年齢が若い?

 このように避けることができない肌の老化ですが、大別すると2通りあると力石さんはいいます。それは「加齢による老化と紫外線による光老化です。加齢による老化は、細かいシワや乾燥、皮膚のたるみとなって現れる一方、光老化は深いシワやシミ、黄ばみとなって現れます。オーストラリアなどでは、小さい子供を真昼に散歩させる際には、大きなハットタイプの帽子と長袖を身に付け、さらに日焼け止めを塗らせるよう、幼稚園の先生が指導を行うほど、紫外線に対するケアが重要視されています。それほど、紫外線による肌へのダメージは大きいのですが、逆に言うと、紫外線と上手に付き合えば効率的に肌の老化を予防できます」。

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1時間の紫外線で表皮のDNAに100万カ所も傷が

 では、紫外線は肌にどのような影響を与えるのでしょうか。
 「例えば、真夏の太陽に1時間当たると、表皮で100万カ所、真皮で10万カ所、DNAに傷ができるといわれています。この傷が修復されずに蓄積されるとシミの原因になることが、先天的な遺伝性疾患(色素性乾皮症)の患者研究から明らかになっています。若い時は、DNAの傷を修復する力がありますが、加齢とともにこの力は衰えてくるので、スキンケアの重要性が増していきます」
 また、肌の老化の多くは、肌の内側にその原因があるようです。
 「例えば、若い肌と年配の肌でコラーゲンを比べると、若い方は太くてしっかりしている。それだけハリや弾力も保たれます。年をとるとコラーゲンが変性するとともに表皮ではターンオーバーを促す基底細胞の数も減り、シミも消えにくくなります」。

医薬品の技術を応用したスキンケア化粧品

 ロート製薬がスキンケアの研究開発を進めるに当たって着目したのが、この肌内部へのアプローチ。
 「肌、特に角質層は、外部からの刺激を内部に入れない役割を担っています。ところが、医薬品の場合、有効成分を効かせるためには、角質層をすり抜けて必要な患部まで届ける“浸透力”が大切です。医薬品用に開発されたこの技術を化粧品に応用できれば、“効く化粧品”を開発できるのではないかと考え、スキンケアの研究開発を進めました」。

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 「機能性化粧品のさきがけとなった「Obagi(オバジ)」シリーズには、こうしたロート製薬の考えが凝縮されています。製品名の由来となったのは、米国の著名な美容膚科医であるドクター・オバジ。肌を表面ではなく、断面で捉え、肌内部へのアプローチで“効くスキンケア”を開発していることでも有名な先生です。ロート製薬はこのドクター・オバジと共同で化粧品開発を進めてきました」。

自宅でできるピーリング&ビタミンCイオン導入

 まず注目したのはビタミンCだったそうです。ビタミンCといえば、高い抗酸化作用を持ち、シミ、ニキビ、くすみ、ハリなど肌に対してマルチに働くといわれる成分。
 「美容皮膚科でも美白などの目的でビタミンCのイオン導入を行う施術メニューがありますね。ところが、ビタミンCは壊れやすく肌にも浸透しにくいという弱点があり、ピュアな状態で化粧品に配合することができませんでした。オバジでは、この“ピュアビタミンC”を高濃度に安定的に配合し、しっかりと浸透させる技術を開発。ビタミンCの美肌パワーを、自宅でも簡単に得られるようになりました」。
 ビタミンCの濃度に合わせて、オバジC5(5%配合)、C10(10%配合)、C20(20%配合)の3タイプがあります。講義中に受講生は、C20を手に取り、その使用感を体験しました。
 ビタミンCの次に、注目したのがピーリング。
 「それまでクリニックでの施術が主だったピーリングに『ホームピーリング』というコンセプトを持ち込みました。それが、フィチン酸、乳酸、グリコール酸の3つの成分を配合した『オバジトリプルピール10』です。美容皮膚科では、ピーリングの後にビタミンCイオン導入を行うことが多いのですが、ピール10 とオバジCを使えば、その両方を自宅で手軽に実施することも可能です」。

加齢、光老化、酸化、糖化の4大原因にアプローチ

 続いて登場した効く化粧品は、ラインで使うことをすすめるブランド「エピステーム」。
 「エイジングの原因となる、加齢、光老化、酸化、糖化の4つについて考えたブランドです。中でも、美容液『HQブライトコンセントレイト』には、医師が使用してきた美白成分のハイドロキノンを配合。さらに、メラノサイトへの情報伝達にかかわるツボクサエキスや、できてしまったメラニンを薄くするビタミン Cも配合しています」。
 エピステームが重視している肌老化キーワード“糖化”は、「トレンド総論」の「これからのトレンド」でも取り上げています。動脈硬化や認知症といった病気の原因になるだけでなく、肌のコラーゲンやエラスチン等が糖化すると、たるみやくすみの原因となることが分かってきています。

漢方によるスキンケアの時代も到来

 講義の最後には、『日経ヘルス プルミエ』前編集長で健康美容情報認定の講師を務める西沢邦浩さんが参加し、追加のディスカッションが行われました。
 ハイドロキノンについて、西沢さんは、「これまでは基本的に医師の管理の下でしか使えませんでした。規制緩和により一般の化粧品にも配合できるようになったわけですが、配合に当たってどのような点を注意したのでしょうか」と、投げかけました。
 それに対し、力石さんは「ハイドロキノンは効果が非常に鋭く、下手をすると刺激が強すぎる等、肌に悪影響を与えてしまいます。そのため、ロート製薬では、まずは皮膚科で販売を開始し、医師のもとで使用してもらいながら、他の成分との組み合わせを最適化し、刺激を起こさずに浸透させるノウハウを蓄積。安心して使えるハイドロキノン製品を実現しました」。

 続いて西沢さんは、ビタミンCやハイドロキノンに並ぶ、機能性成分としてレチノイン酸を紹介。「米国では、抗シワ薬としてレチノイン酸が認可されています。日本では、医師の責任において処方する以外は認められていませんが、その関連成分であるレチノールが広く利用されています」。
 最後には、漢方による肌へのアプローチについても。
 「のみやすさを重視して錠剤の漢方を出しています。肌の乾燥やかゆみには『当帰飲子(とうきいんし)』があります。肌を内臓の鏡としてとらえ、自分にあった漢方で体の内側から健康になると、自ずと肌の調子もよくなるのでは」と力石さん。

大塚製薬の「SOYSH」

 「当帰飲子では肌の乾燥が改善するというデータもあるようですね。いよいよこれからは漢方でもスキンケアできる時代が来たといえそうです」(西沢さん)。

 ますます進化するスキンケアアプローチ。次々と紹介される“効く化粧品”とそれを支える科学的な背景に、女性はもちろん、男性もクギ付けに。受講生の皆さんは、肌測定を通じて自身の肌状態もしっかりとチェックし、「お肌」に対する考えを新たにしたようでした。

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