Kenbiコラム
第21回
歯を1日1回磨く人と2回磨く人で、見た目の年齢には何歳くらい差が出るでしょう?
(1)差は出ない (2)2歳 (3)4歳 [9月13日]
- (3) 1日2回歯を磨く人は、1回の人に比べ、見た目年齢が4.2歳若い、という研究結果が発表されています。
- 「いつまでも見た目は若々しく、健康でいたい――」。これは、年齢に関わらず女性に共通する願いです。一方、それを実現するためには相当な努力も必要に違いありません。ところが、ちょっとした生活習慣次第でその願いがかなうとしたら朗報ですよね?
どんな生活習慣が見た目年齢に関係する?
2010年に、環境や生活習慣と見た目年齢との関係についての研究結果が発表されました(PLoS One:5(12),e15270,2010)。この研究は、中国・上海に住む25~70歳の女性250人を対象に、食事や教育レベルといった「環境」、太陽に当たる長さ、運動習慣、歯磨き回数、クレンジング・保湿液・ナイトクリームといったフェイシャルケア製品をどのくらいの頻度で使っているかなどの「生活習慣」を調査し、これらが実年齢と見た目年齢の"差"に、どのくらい関係しているかを検証したものです。
その結果、フェイシャルケア製品によるしっかりケアより、見た目年齢の差に強く関連していたのが、なんと歯磨きの回数!だったのです。1日2回歯を磨く人は、1回の人に比べ、見た目年齢が4.2歳も若いという結果に。
次に差が大きかったのが、太陽に当たっている時間が長い仕事環境にいるかどうかで、屋内仕事の人は屋外仕事の人に比べ平均3.96歳若く見えました。同様に、アイクリームの使用回数が週4回以上の人は、3回以下の人より2.64歳、全く使用しない人より1.8歳若いことが判明。
ちょっと不思議なところでは、家族の人数が3人未満の人は、3人より多い人に比べて2.02歳、見た目年齢が若いというのも。
あなたはこの理由をどう考えますか? 家族の人数が少ない方が健康や美容に使える金額が多くなる? それとも、相手や自分をじっくり見つめる時間が相対的に長くなる?
研究結果をもとに、こんなことを考えてみるのも楽しいですね。
実は、見た目年齢に影響を与える要因が歯磨き以外である可能性も
さて、ここまでの文章を読んで、早速、1日2回歯を磨いて、アイクリームも毎日使わなきゃ、と考えた方。それは見た目年齢の維持にとって効果的な習慣である可能性は高いのですが、エビデンスレベル(情報の確からしさ)から考えると、「1日2回以上歯磨きをすると、1回のときより見た目年齢が若くなる」とまだ断言はできないんです。
ちょっとだけ難しくなってきましたが、いましばらくお付き合いくださいね。
この研究で検証した環境や生活習慣と見た目年齢は、調査時点の状態に過ぎず(専門的には「断面研究」といいます)、このような環境や習慣を"続けること"が見た目年齢にどれだけ影響するかという点については調べていないのです。
例えば、見た目年齢の若い人はそもそも歯の健康に気を付けている人が多く、定期的に歯科に通っていて、そのことが見た目年齢に大きく影響するといった場合もありえます。そして、そういう人が持つ歯に関するほかの習慣の一つに、「歯磨き回数が多い」というのがあったのかもしれません。
つまり、この調査だけではまだ、見た目年齢に影響を与える要因が、歯磨き回数とは別に存在する可能性も捨て切れないのです。
この研究を行ったグループは、見た目年齢に相互に関連する3つの要因として、(1)行動習慣、(2)社会経済的状況、(3)肌への影響因子を挙げ、具体的に9つの環境・生活習慣を指摘(図)。 しかし、「今回の研究で、見た目年齢に関連するいくつかの環境・生活習慣を明らかにしたが、因果関係があるかどうかは、長期間にわたる観察研究(縦断的研究)や介入試験が必要になる」という注意書きを加えています。原因と結果の関係を明らかにし、より高いレベルのエビデンスにするには、見た目年齢に関連すると考えられる環境や生活習慣を長い期間にわたって続けた場合の影響を検証することが求められるというわけです。
なお、見た目年齢に関する研究には、双子を分析して喫煙やBMI(体格指数:体重kg÷身長m÷身長m)などと見た目年齢の関係を調べた研究(Plast Reconstr Surg;123(4),1321-31,2009、喫煙習慣を持つ片方は持たない方に比べて喫煙10年につき2年は余計に年をとる、という結果が!)や同じように双子を追跡して、見た目年齢の若い片方の方が長生きだと結論付けた研究(BMJ;339.b5262,2009)もあります(関連コラム)。疑問を感じたら、同じキーワードに関する別の研究を調べてみることも重要です。
美と健康についてのコミュニケーション力を高めるカリキュラムのススメ
このように健康や美容に関するエビデンスや研究成果は、そのままうのみにせず、正しく読み解きたいもの。一方、これらの一次情報は難解な用語を使った文章で、内容がよく理解できない、ということもよくあります。
でも、読み解くコツを身につければ、健康や美容のために重要な意味を持つ情報を、効率的に入手し判断することができるようになります。
"エビデンスに基づく正しい健康美容情報の提供"を行ってきた日経ヘルス、日経ヘルス プルミエでは、こうしたノウハウをカリキュラムにまとめ、健康美容情報認定講座「健康美容コミュニケーターコース」として編成しました。
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