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Kenbiコラム

第27回
ダイエットのためには、エネルギーを少しでも多めに使うよう睡眠時間を短めにした方がいい? [3月27日]

睡眠時間が長い方が、ダイエットの“質”を高める、という報告があります。
 春眠暁を覚えず・・・・・・日に日にぽかぽか陽気が増し、眠りが心地よい季節がやってきました! でもウトウトしていると、夏はあっという間。夏に向けて、気になるぜい肉や脂肪を少しでも減らしたい! と、ダイエット計画を練っている皆さんも多いと思いますが、睡眠時間の長さとダイエット効果に関係があるとしたら?

8.5時間睡眠と5.5時間睡眠では違うダイエットの"質"
 睡眠時間の違いで、体重の減り方とその"質"がどう変わるかを調べた米国の研究があるんです。35~49歳の太り気味(BMI(体格指数)25~32kg/m2)の男女10人に、カロリー制限をしながら、8.5時間睡眠と5.5時間睡眠をそれぞれ2週間とってもらい、減量の効果を調べました。
 その結果、8.5時間睡眠も5.5時間睡眠も、それぞれ平均2.9kg、3.0kgの減量に成功したのですが、その質が大きく違っていたのです! 8.5時間睡眠は、1.4kgが脂肪の減量で、残りの1.5kgは筋肉や水分などの脂肪以外の減量。つまりダイエットで減らした分の半分が脂肪だったのに対し、5.5時間睡眠では脂肪の減少が0.6kgにとどまりました(図1/Ann. Intern. Med.; 153(7),: 435-441,2010)。

sleepdiet.jpg さぁ、今日の夜は、無駄な脂肪を減らすために、早くベッドに入らなきゃ、と考えた方。確かに、十分な睡眠時間はダイエットだけでなく、健康や美容にとってもオススメですが、8.5時間睡眠で本当に脂肪を効率よく落とすことができるかを確認するには、さらなる研究を待たなければなりません。
 この研究は、対象者数、試験期間も少なく、隔離した実験室という特殊な環境で行ったもの。そのため、私たちの日常生活に当てはめるには検証が必要です。研究グループは、「減量のための食事療法の効果が、睡眠不足によって不十分となる可能性がある。エネルギー代謝や体重減少などに対する睡眠不足の長期的な影響を検証するために、追加の研究が必要」と記しています。

睡眠時間が短いと食欲が増す?
 この研究では、睡眠時間と食欲調節ホルモンについても調べています。私たちの体では、食欲を刺激するグレリンと食欲を抑制するレプチンというホルモンが、シーソーのようにバランスをとりながら、食欲を調整していますが、8.5時間睡眠と比べ5.5時間睡眠では、グレリンの血液中の濃度が高まるという結果に。
 別の研究でも、短い睡眠は、グレリンの血中濃度が高くなる一方、レプチンが低くなることが分かっています。さらに、睡眠時間が短いほど、BMIも高い傾向がありました(PLoS Med, ; 1(3),e62,2004)。十分な睡眠ができないと、食欲が増し、満腹感を感じにくくなるのかもしれません。

 睡眠は若返りホルモンといわれる成長ホルモンの分泌にも影響します。成長ホルモンは、私たちが寝ている間に、脂肪の分解や傷んだ肌・臓器といった組織の修復、筋肉・骨の形成といった代謝を行ってくれるうれしいホルモン。その分泌が最も多くなるのは、午後11時頃に就寝した場合との研究も。また、寝る前に甘いものや炭水化物を取ると、糖を代謝するためにインスリンというホルモンの分泌が優先され、成長ホルモンの分泌が抑制されてしまいます。
 睡眠時間はもちろん、ベッドに入る時間や食事にも気をつけて、快眠を手に入れたいですね!

体内時計のリズムを整えて快眠を手に入れる
 良質な睡眠のために大切にしたいのが、生活習慣のちょっとした工夫。そしてそのカギを握るのが、私たちの体に埋め込まれている体内時計です。
 体内時計は、昼間は活動モード、夜は休息モードに切り替えながら、1日約25時間周期でリズムを刻んでいます。1日は24時間のため1時間のズレがあるわけです。加えて、夜更かしが続いたり、起床時間がバラバラだったりするとさらにズレが広がり、体内時計のリズムが乱れてしまいます。その結果、睡眠トラブルを引き起こすことに。しかも、今の私たちの周りには、リズムを狂わす生活習慣がいっぱい!

 例えば、パソコンやスマホなどのデジタル製品の薄型ディスプレイに使われているLEDから強く出る青い光(ブルーライト)。夜、ブルーライトのような強い光が眼から入ると、体内時計が狂い、スムーズに睡眠に向かわなくなります。DP162_L.jpg
 実際、夜2時間タブレット端末を使ったら、良質な睡眠に導くホルモン・メラトニンの分泌が22%減ったという研究も(Applied Ergonmics;31 July,2012電子版)。そのため、夜は意識的にパソコンやスマホなどの使用を控え、光をセーブすることが大切です。逆に、活動モードにしたい朝は、太陽の光を浴びる、部屋の中を明るくするなど、「光」を意識的に浴び、活動モードに切り替えるることがポイントに。
 食事も体内時計のリズムに大きく影響します。体内時計は私たちの体の様々な器官にありますが、脳以外の体内時計は食事でリセットされることが分かっています。空腹の状態が長く続いた後に食事をすると、体内時計は「朝食」と認識して、活動モードに切り替わります。
 そのため、夜遅い夕食は体内時計のリズムを狂わす大きな原因に。12時にランチをとって夜遅くまで仕事をして、深夜に帰宅。それから食事をしたら・・・・・・。体内時計は、「朝食だ」と勘違いして、活動モードに切り替わり、睡眠にも影響を与えてしまうというわけ。夕食はあまり遅くならない時間までに済ますのが理想的。どうしても夕食が遅くなってしまう場合は、夕方に間食を。

 また、スムーズな入眠のためには、体温変化を上手に利用しましょう。眠気は、深部の体温が下がることで生まれます。夕方から早めの夜にかけて軽い運動や入浴などで体を少し温めておくと、夜に向かって体温が下がっていくため、眠りにつきやすくなります。逆に夜遅くなっての運動や熱い風呂は睡眠を妨げる原因になります。

美と健康の近道「健康美容コミュニケーター」のススメ
 もちろん、美と健康のためには、良質な睡眠だけでなく、正しい食生活や運動、生活習慣、スキンケア方法を身に付けることが大切です。

 「これまで色々なダイエット法や食事法を試してきたけど、どれも効果がいまいちだった」
 「インターネットやメディアでは色々な健康美容情報があって、どれを信じていいのか迷っちゃう」

 こんな方は、信頼のおける情報源から情報を入手し、さらにそれを正しく読みとくことで、私たちの健康や美容のために重要な意味を持つ情報やスキルを身につけることが近道です。
 "エビデンスに基づく正しい健康美容情報の提供"を行ってきた日経ヘルスでは、こうした情報の読みとき方やトレンド、知っておきたいエビデンスなどを12時間のカリキュラムにまとめ、健康美容情報認定講座「健康美容コミュニケーターコース」として編成しました。
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