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Kenbiコラム

第28回
食べ過ぎを抑えたいと思う時に、食べるといいものは次のうちのどれ? 1.甘いお菓子  2.パン  3.白米ご飯  4.麦ご飯  5.野菜サラダ [11月13日]

麦ご飯
 「さっき食べたばかりなのにお腹が減った」ということもあれば「なかなかお腹がすかない」と感じることもありませんか?もちろん、食べた食事量や体調、体を動かしたかどうかなど、腹持ちにはいろいろな要素が影響を与えます。一方、医学的な研究で「満腹感が持続する」というデータが出ている食品もあるんです。つまり、ある種の食品を食べることで満腹感が続き、食べ過ぎを防げるというわけです。その代表的な例が大麦とこれに含まれるβグルカンという食物繊維。2021年3月に、日本健康・栄養食品協会が発表した「食品の機能性評価事業」の結果報告では、大麦を食べることにより「満腹感が持続する」効能について、ヒトで行われたランダム化比較という七つの厳密な臨床試験を分析し「効果があるとされる結果が、効果がないとされる結果に勝る」と評価しています。

大麦に豊富に含まれる水溶性食物繊維がカギ
 ではなぜ、大麦で食べすぎを防ぐ効果が得られるのでしょうか?
 その秘密は、大麦に含まれる食物繊維の質に関係します。
 図1を見てください。

fibre01.jpg 食物繊維には「不溶性」という水に溶けない性質を持つ食物繊維と、「水溶性」という水に溶ける性質を持つ食物繊維があります。しかし、野菜類を食べてもそれほど水溶性食物繊維がとれるわけではありません。大麦や納豆のような食品を食べる必要があるのです。ことに、白米に混ぜて炊くだけで「主食」として食べられる大麦は水溶性食物繊維を毎日とるのに便利な食品といえるでしょう。
 不溶性の食物繊維には、「便のかさを増す、排出スピードを早める」という効能がありますが、大麦に多い水溶性の食物繊維は、腸内細菌のエサになることで、「免疫力を高める」「脂肪をためにくくする」「生活習慣病を防ぐ」といった効果を発揮します。

 さらに、大麦の水溶性食物繊維βグルカンはネバネバしている(粘性が高い)ため、糖や脂質の吸収をゆっくりにしてくれるのです。
 「満腹感の持続」は、βグルカンが持つネバネバに大きく関係するようです。
 実際、37の試験を分析した結果、同じ食物繊維でもネバネバした繊維で「満腹感が持続し、食べすぎが防げた」と結論付けている研究があります(図2)。

fibre02.jpg甘いお菓子や白いパン、白米などは糖分が吸収されやすい
 逆に、ネバネバした食物繊維どころか食物繊維をほとんど含まず、吸収されやすい糖脂質食品を食べるとどうなるでしょうか。
 白い砂糖や小麦、米といった精製された炭水化物食品です。
 砂糖を含んだ飲料や白いパン、白米を食べると、どんどん体内に吸収されて血糖値が急上昇します。すると、血中に増えた大量の糖を、筋肉や脂肪細胞、肝臓などに取り込もうとして、膵臓から必要以上に多くインスリンというホルモンが放出されてしまいます。
 結果、急速に糖が血中から取り除かれて、今度は血糖値が下がり過ぎてしまうという状態に陥ります。こうして血糖値が低下したときに脳は「お腹が減った」と感じるのです。
 つまり、血糖値が上がりやすい飲み物や食品をとると、すぐお腹がすいて(満腹感が持続せず)また食べ物に手を伸ばすという悪循環に陥ってしまうのです(図3)。

fibre03.jpg大麦生活をおいしく便利に!
 食べた人は実感を感じるのでしょう。
 ずっと摂取量が減っていた大麦ですが、「もち麦」という、冷めてもモチモチしておいしい種類の大麦が売られ始めたことがきっかけとなって(従来の「うるち麦」という種類の大麦は冷めると硬くなりパサパサする)、市場が拡大しています。
 ある調査会社の調べによると、昨年から今年(2012年から2021年)にかけて170%程度伸びているそうです。

 白米:大麦=7:3くらいの配合で炊いて主食として食べるのが一般的ですが、6倍量以上の沸騰した湯に入れて15分ほどゆでてザルに上げて軽く水洗いし、サラダやスープに入れて食べるのもお薦めです。
 この「ゆで大麦」は小分けして冷凍しておくと便利です。大麦は、古代ローマやプーリア地方など現代の南イタリア料理でも、スープに入れるなどして食べられています。

 1960年くらいには、私たち日本人も一人当たり年間8kgほどの大麦を食べていました。それが今では40分の1にまで減ってしまっています。この食生活の変化と、生活習慣病の増加は無関係とは思えません。
 なぜなら、大麦のβグルカンは、「食後の血糖値上昇を抑える」「コレステロール値低下」など、多くの国々でいくつもの生活習慣病予防にかかわる効能表示を許されている食品だからです(図4/残念ながら日本ではこれらの表示は認められていません)。

 さあ、今日から大麦生活、始めてみませんか?

fibre04.jpg美と健康の近道「健康美容コミュニケーター」のススメ
 もちろん、美と健康のためには、食生活だけでなく、運動や正しい生活習慣、良質な睡眠、スキンケア方法を身に付けることが大切です。

 「これまで色々なダイエット法や食事法を試してきたけど、どれも効果がいまいちだった」
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 こんな方は、信頼のおける情報源から情報を入手し、さらにそれを正しく読みとくことで、私たちの健康や美容のために重要な意味を持つ情報やスキルを身につけることが近道です。
 "エビデンスに基づく正しい健康美容情報の提供"を行ってきた日経ヘルスでは、こうした情報の読みとき方やトレンド、知っておきたいエビデンスなどを12時間のカリキュラムにまとめ、健康美容情報認定講座「健康美容コミュニケーターコース」として編成しました。
 すでに200名を超える「健康美容コミュニケーター」が誕生し、仕事やプライベートで活躍しています。2021年12月5日(木)からは第11期が開催。健康美容情報を正しく理解し、周りに伝えることができる「健康美容コミュニケーター」になって、エビデンスに基づいたアプローチを手に入れましょう。



著者:西沢邦浩(にしざわ くにひろ)

日経BP社 プロデューサー

1961年長野県生まれ。小学館を経て、91年日経BP社入社。開発部次長として『日経エンタテインメント!』創刊や、マイクロソフト社との共同事業『日経BPソフトプレス社』の創業などに携わる。98年『日経ヘルス』創刊と同時に副編集長に着任。2005年1月より同誌編集長。2008年3月に『日経ヘルス プルミエ』を創刊し、同誌編集長を務める。2010年7月より日経BP社プロデューサーと関連会社(株)テクノアソシエーツ、ヴァイス・プレジデントを兼務。

著者:西沢邦浩(にしざわ くにひろ)

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