ニュース&コラム

Kenbiコラム

第9回
見た目が若い人のほうが、寿命が長い傾向がある。○か×か。 [1月18日]

イメージ

○。若々しく見える人の方が長生きするという研究があります。
 人は誰しも、年を重ねるごとにシワを刻み、年齢相応の顔立ちになっていきますが、実年齢よりも若く見える人もいれば逆の人もいます。それは単なる“見た目”の違いだけではなく、寿命にも関わっているかもしれないということが、双子を対象に行った追跡調査で明らかになりました。

 対象は、70歳以上のデンマーク人の双子1826人。その内訳は、387組の同性の双子と、双子の片方が死亡した1052人です。2001年に全対象者の顔写真を撮影し、その写真を三つのグループ(20人の女性看護師、10人の男性教育実習生、11人の高齢女性)に見せて年齢を推定してもらいました。もちろんこの41人は、双子の年齢を知りません。

 その後7年間の追跡期間に全体の37%に当たる675人が亡くなりました。そして、死亡者の多くは2001年の調査時に、「実年齢よりも老けて見えた人」でした。また、387組の双子のうち、179組の双子で計225人が亡くなりましたが、双子の見た目年齢の差が大きいほど、老けて見えたほうが早死にする傾向にありました。

 同じような遺伝的背景を持つにも関わらず、その後の生活や環境の変化によって生じた見た目の違いが寿命のバロメーターになっている、というわけです。
 つまり、年齢よりも老けて見えるということは、体内でも、老化やそれに伴う病気が進んでいる証かもしれないのです。いつまでも若々しくはつらつとした表情を保っていられる毎日を送りたいものですね(データ:BMJ;339:b5262,2009)。

 では、若々しい見た目を保つにはどうしたらいいのでしょうか? 有力な対策の一つがカロリー制限です。米ウィスコンシン大学のグループが2009年に米科学誌の『Science』に発表した研究に載った、「カロリー制限を続けたサル」と「普通の食事を続けたサル」の写真は、大きな話題を呼びました。ひと目で分かるほど、見た目年齢に歴然とした差がついていたからです。

 この研究は、アカゲザルを、普通の餌で育てるグループと、ビタミンなどの必要な栄養素は保ちながら摂取カロリーを3割減らして育てるグループに分けて、20年以上観察を続けました。20年後、普通の餌グループの毛は弱々しく、白髪がたくさん生えて、顔はシワだらけ。背中が曲がって動きも鈍い老齢ザルになりました。一方、摂取カロリー3割カットのグループは、毛並みがよく顔は引き締まり、若々しくて動きもいい。両者はまるで親子のようです。そして、普通の餌グループは20年の間に37%(38匹中14匹)が加齢に関連する原因で死亡したのに対し、摂取カロリー3割カットのグループは同13%(38匹中5匹)でした。

 しかし、現代に生きる私たちにとって、カロリー3割カット生活を続けることは「かなり厳しい」というのが正直なところでしょう。そう考えると、先人の言う「食事は腹八分目」を意識することが、見た目と中身のアンチエイジングのための現実的な方法と言えそうです(データ:Science;325,201-204,2009)。

page top