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作用機序解明が進むプロテオグリカン 今後の重点テーマは臨床応用、弘前大 [10月10日]

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コラーゲン、ヒアルロン酸とともに、皮膚や軟骨などに広く存在する糖たんぱく質「プロテオグリカン」。皮膚の保湿やハリの改善、関節痛の軽減などのエビデンス(科学的根拠)が明らかになり、新規の機能性成分として食品や化粧品への採用が進んでいる。こうした中、学部横断的にプロテオグリカン研究を進める弘前大学や機能性素材メーカーの一丸ファルコス(岐阜県本巣市)などを中心に、多様な生理活性を裏付ける作用メカニズムの解明が加速している。 また、2013年7月には、プロテオグリカンを活用して、弘前エリアの産業集積を図る青森県の戦略が、文部科学省の地域イノベーション戦略支援プログラムに採択。今後、5年計画でプロテオグリカンの新商品の開発等を加速する計画で、弘前大学や青森県産業技術センターを中心に、プロテオグリカンの構造と機能の相関解析や医薬品への応用を目指した臨床応用を重点テーマに掲げている。

腸管の免疫反応を正常化するプロテオグリカン
nakane,pf.jpg 医薬品への応用分野で注目されているのが、プロテオグリカンの体内炎症物質の産生抑制作用。弘前大学の中根明夫副学長(写真)の研究グループはプロテオグリカンの腸管での作用メカニズムの解明からこの点にアプローチし、プロテオグリカンが腸内環境を改善し、腸管に存在する免疫細胞の1つであるヘルパーT細胞からの炎症物質の産生を抑制することを確認した。
 タバコやアルコール、ストレスなどの刺激が継続すると、生体内でTNF-αやインターロイキンといった炎症物質が慢性的に過剰状態になり、活性酸素が発生。がんやリウマチ、生活習慣といった疾患を引き起こすことが指摘されている。生体内の炎症作用については、一般にはまだ知られていないが、様々な慢性疾患や生活習慣病の"火元"になっているといわれている。
 中根氏は、「プロテオグリカンは、動物試験も含め、潰瘍性大腸炎や関節炎、アレルギー性疾患などへの効果が示唆されている(図1)。これら疾患の"火元"には、炎症反応が関与している。プロテオグリカンが善玉菌優位の環境に腸内を変えることで、腸管の免疫細胞の働きを正常化。過剰な炎症を抑制することで、全身の免疫系に影響を与え、生体の恒常性維持に働くと考えられる」と話す。

pgfunction1.jpg腸管から"そのままの形で"吸収される可能性
 腸内に届いたプロテオグリカンは、その後、どうなるのか?こうした視点でアプローチしているのが、サケ由来のプロテオグリカンを機能性素材として提供する角弘と一丸ファルコス、東北女子大学の研究グループ。ラット腸管を用いた吸収試験で、プロテオグリカンが腸管から吸収されることを確認。特に、小腸の一部である空腸での吸収量が有意に高いことが明らかになった(図2: Biosci. Biotechnol. Biochem., 77(3), 654-656.)。

pgchoukan.jpg プロテオグリカンは分子量が数十万という巨大分子。そのため、従来は、そのままの形では吸収されないと考えられていた。「プロテオグリカンは、もともと生体に存在する分子なので生体細胞との親和性が高く、経口摂取でも消化されずに体内に吸収されると考えられる。具体的には、エンドサイトーシスと呼ばれるメカニズムを介して腸管吸収されるようだ」(一丸ファルコス開発部長の坪井誠氏)と話す。
 エンドサイトーシスとは、たんぱく質などの大きな物質を細胞内に取り込む過程の一種。物質の種類や大きさ、取り込み機構の違いなどからいくつかに分類されており、栄養成分や分子の吸収だけでなく、細胞へのシグナル伝達の調節においても重要な役割を果たすといわれている。

コラーゲンやヒアルロン酸合成の司令塔

 プロテオグリカンの存在は1970年代に明らかになっていたが、安価な抽出技術が確立されておらず、1g3000万円という高価な価格がネックとなり研究が進んでこなかった。2004年に弘前大学の研究成果を基に、青森県の角弘が安価な製造技術を確立し、サケの鼻軟骨から安定的な抽出が可能になった。
 安定供給により、研究基盤が整ったことで研究が加速。保湿作用や抗シワ作用、たるみ改善作用といった美肌効果や、関節痛の緩和、軟骨代謝の改善といった関節への効果がヒト試験で確認されている。また、細胞実験では、プロテオグリカンのヒアルロン酸やコラーゲンの産生促進作用や、EGF様作用(表皮細胞増殖促進作用)を確認。プロテオグリカンが、コラーゲンやヒアルロン酸の"司令塔"のような役割を果たし、皮膚や骨・関節といった組織の正常な代謝を促進すると見られている。


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