ニュース&コラム

Kenbiニュース

アジア健康ニーズを取り込む素材・食品メーカー 商品価値の現地化と情報戦略がカギに [9月5日]

人口減少や高齢化により市場縮小が予想される国内の食品市場。各メーカーは、中間層が台頭するアジア市場への進出を加速している。中でも、健康機能性を訴求する機能性素材や食品を展開する国内企業は、アジアの健康ニーズの取り込みに向け、商品価値の現地化と第三者を活用した情報戦略を推進している。アジア各国の人口構成は若いものの、所得の向上に伴い、健康的な食品や素材を求める傾向が強まっているという。各企業の事例からアジア進出の現状とマーケティングアプローチを追った。

販売代理店を通じて現地の実態を把握する
 アジア進出に当たって関係者が口を揃えるのが、「現地」の把握だ。「現地特有の文化や風土、ライフスタイルといった生活者の実態、事業者の商流やビジネスマインドといった商習慣の理解が欠かせない。さらに、現地の規制や制度を把握し、輸出に必要なデータや書類を揃え、製造や販売計画を立案する必要がある」(機能性素材メーカー幹部)。
 多くの日本メーカーが活用しているのが現地の販売代理店だ。消費者の動向や商習慣の情報に加え、現地有力メーカーや当局関係者とのパイプの活用が狙い。中国や韓国などアジア10ヵ国で美容素材を事業展開する一丸ファルコス専務取締役の安藤一彦氏は、「会社の規模ではなく、当社の素材を優先的に取り扱ってくれるなど、メーカーへの営業力を評価する。加えて、コミュニケーションの円滑さといったオペレーションのしやすさや当局との関係性の強さなどを考慮し、販売代理店を絞り込んでいく」と選定理由を挙げる。
 アジア各国では、総じて日本の食品、素材へのニーズは高いといわれる。中でも、台湾やタイ、インドネシアといった親日国では「メード・イン・ジャパン」が強いブランド力を持ち、健康美容効果に対する消費者の期待も高い。「日本や中国と比べ人口が若いので健康課題は顕在化していないが、健康的な食を求める消費者は確実に増えている。美容に関しても美白ニーズが極めて高い」(前出のメーカー幹部)。一方、日本発の素材や食品は価格が高いため、機能性やエビデンスを正しく伝えるマーケティングが市場攻略のカギを握るという。

マーケティングのカギを握る"第三者の活用"
 欧米に加え、オーストラリアやシンガポールで還元型コエンザイムQ10を展開するカネカQOL事業部で学術を担当している藤井健志氏は、「日本の素材は価格が高いので、エビデンスは重要な差別化要因になる。但し、エビデンスだけではいずれキャッチアップされるので、認知度やブランド向上、トレンド創出といったマーケティングを展開することが欠かせない」と指摘。その上で、「メーカー主導で正しい情報やエビデンスを作ることはできるが、それをきちんと伝えるためにメディアや論文、大学といった第三者による評価・情報発信が欠かせない」と見る(図1)。
figure1Q10k.jpg
 同社では、現地代理店と連携してメディア広報を進めたり、現地大学との共同研究成果を大学のリリースとして発表したりすることで、情報発信、話題作りを促進し、還元型コエンザイムQ10のマーケティングを進めている。また、代理店任せにできない機能性やエビデンスに関する学術的な情報発信については、同社関係者が直接現地に出向き、セミナーや研究会等を実施。一時のブームで終わらせずトレンドとして定着させるために、機能性を丁寧に訴求している。

ブロガー活用で売上倍増に成功
 ブロガーをマーケティングチャネルとして活用して、Webマーケティングを展開したのが明治のコラーゲンサプリメント「アミノコラーゲン」だ(図2)。同社は、2006年にタイに販売会社を設立し、菓子の販売を通じて明治ブランドを確立している。アミノコラーゲンのプロモーションでは、2012年に著名なブロガーを起用。実際に商品を使用してもらい、その感想や効果、実感、使い方などをビデオブログで紹介。読者の共感を呼び込み、売上につなげるマーケティングを仕掛けた。
figure2aminocol2.JPG
 「アミノコラーゲンのような機能性食品は、万人が摂取できるわけではない。現地ユーザーにとっては価格も高いので、ターゲットを健康美容に関心の高い富裕層と設定した。一般層と比べ、PC・携帯端末の所有率が高く、Webへの接触時間も長いと考え、ブロガーを活用した。ブログからWebでの口コミにつながり、配荷が拡大。1年で売上が倍増した。今後は中間層の開拓がテーマとなる」(明治海外ユニット海外菓子事業部吉井洋二氏)と振り返る。

現地風土・生活習慣から商品価値を現地化
 医師や看護師をマーケティングチャネルとして活用し、成功したのが大塚製薬の「ポカリスエット」だ。現在では、インドネシアで4億本以上売るヒット商品になっているが(2010年JETRO調べ)、スポーツ飲料として参入したしばらくは苦戦。同国は、気候の関係からスポーツ人口が少なかった。
 そこで、現地ではデング熱という特有の感染症がたびたび流行することに着目。デング熱の際の水分補給飲料として医師や看護師にポカリスエットの特徴と効果を刷り込んだ。同時に、患者への無料配布を実施し、支持を拡大した。さらに、ラマダン中の断食にも着目。日没後の断食明けに集中サンプリングすることで、ラマダン時の水分補給飲料としての地位を確立した。

 いずれも素材や商品の最終ユーザーである消費者の生活実態や利用シーンに着目。商品価値を現地化するとともに、第三者を活用した情報戦略が共通のマーケティングアプローチとなっている。現地ニーズを丁寧に拾い上げ、商品価値や利用シーンを提案すること。当然ともいえるこの王道が、アジア市場攻略のカギといえそうだ。

(テクノアソシエーツ 笹木雄剛)








<健康美容情報ナビからのお知らせ>
健康美容情報ナビの提携メディアである日経ヘルス/日経ルス プルミエは、健康美容情報認定の研修プログラムとして「健康美容コミュニケーターコース」を主催しています。これは、日常生活において健康と美容の情報を正しく理解して行動できるスペシャリストを養成するものです。

★☆健康美容情報認定講座(第12) 参加者募集☆★
~実生活に役立つ、ビジネスに役立つ! 健康・美容の知識と教養、
 情報スキルを演習を交えて体系的に学ぶ全8講義~

 美容と健康に関するエビデンス情報の読みとき方やトレンドなどを、12時間の講義を通じて学ぶ講座です。毎回、ゲスト講師を招いてトレンドを学ぶ「トレンド体験」では、健康美容の人気企業が登場し、具体的な商品を交えながら最新のトレンドや研究成果について紹介していただきます。

【期間】
 2014年11月13(木)~15日(土)
 13日、14日18:30~21:40、15日9:30~17:00
【定員/受講料】
 30名(先着順)/12万9600円(消費税込み)*修了試験料含む

◆実施概要の詳細は ⇒ こちら

関連ページ

page top