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健美の賢人インタビュー
 [ 2011年2月16日 ]
   
 

メディアの報道でも不正確なことが多いから

効能の根拠となる「エビデンス」の
レベルに敏感になる必要があります

 


東京大学大学院医学系研究科教授
工学博士 大橋 靖雄 氏

 「○○のがん細胞抑制作用を確認」「××に脂肪燃焼効果が!」「△△が薄毛を改善」――。日々私たちの目には膨大な量の健康・医療情報が飛び込んできます。なかには、商品の効果を、個人の体験談などで巧妙に“演出”する商品もあるほど。これは科学的根拠、つまりエビデンスがある商品といえるのでしょうか? 実はエビデンスにも“格”があります。これを知るだけでも健康・医療情報を見る目は大きく変わるはず。
 現在も100を超える臨床試験に関わる疫学・生物統計学の第一人者で、「健康美容情報認定講座」の監修者でもある東京大学大学院医学系研究科教授の大橋靖雄さんに、エビデンスの見方についてお話を伺いました。


― 新聞・インターネットやテレビで、毎日のように医薬品や食品に関する研究成果が報道されます。残念ながら、科学的な検証が十分とはいえない情報も多いため、読者・視聴者がミスリードされる危険性も否定できません。

健・美・賢人インタビュー:大橋 靖雄 氏
東京大学大学院医学系研究科教授
工学博士 大橋 靖雄 氏

 医薬品や食品の効果効能は、個人ではなく集団で評価した(実験的な)臨床試験や(観察研究である)疫学研究を経て、はじめてエビデンスとして意味を持ちます。臨床現場で用いられている医薬品は、すべてヒトの集団を対象に評価したもの、つまり臨床試験で有効であることが証明されたものです。
 しかしながら、ヒトの研究の重みと意味がまるで理解されていない報道も散見されます。ヒト試験以前の基礎研究なのに、あたかもすぐ医薬品になるような印象を持たせる記事も多い。試験管実験や動物実験も、大切な基礎研究ではあるものの、得られた結果をもって すぐヒトに効くということはできません。
 また、学会発表の位置付けについても理解が低い。ニュース性が高いこともあって、学会発表が大きいニュースになることも多いですね。しかし、学会発表は、同じ分野の研究者に研究成果を吟味してもらい、助言をもらう場であって、発表された成果が必ずしも「正しい」とは限りません。学会発表の後も研究がさらに積み重ねられ、再現性が確認されないとエビデンスとは言えないのです。


― メディアの報道を鵜呑みにするのではなく、我々自身が研究成果や健康情報のレベルを吟味する必要があるわけですね。例えば、食品や健康食品の分野において、エビデンスレベルの高さが評価できる研究事例はありますか。

 残念ながら、まだそのような事例はあまり見当たりません。その背景には、健康食品、食品のエビデンスを、ヒトを対象に短期間で出すのは非常に難しいということが挙げられます。医薬品の場合、有効性を評価するために、配合量や服薬パターンなどを明確にデザインできますが、食品の場合、食事のタイミングや量、調理方法などが個人個人で異なり、研究対象の成分以外の食材・栄養素も一緒にとるため、特定の健康食品や食品のみを対象とする純粋な試験系を作りにくい。
 また、有効性が高い成分は毒性(副作用)も強いことが多いのですが、医薬品と違って日常生活で摂取する食品の場合、毒性は絶対に許されません。これは逆に、「そんなに強い有効性も期待できない」ということでもあります。このような理由のため食品は、医薬品評価で行われる実験的な臨床試験より、ある意味あいまいな観察疫学研究で評価せざるを得ないことが多いのです。
 観察疫学研究では、とくに介入を加えず食生活や生活習慣全体を対象に評価していくので、様々な解析結果やエビデンスが出てきます。ただし、他の要因の影響を十分排除できませんから、得られたエビデンスを解釈するのが、医薬品よりはるかに難しい。そのため、医薬品のような特定の効果を期待して、特定の食品を選定することも困難です。


― 食品や健康食品は、それ単独の効能を評価しにくい性質のものと言えそうですね。ところで、インターネットの普及によって、一般の人々も、その気になればエビデンス情報にアクセスできる時代になりましたが――。

 エビデンスというものは、研究成果の集積によって、常に変わっていくものですが、インターネット環境さえあれば、一流ジャーナルに掲載された論文を誰もが容易に見られる、つまり最新のエビデンスにアクセスできるようになりました。これには、1996年のPubMed※公開が大きく影響していると考えています。
 また、臨床の現場では、患者さんが論文を手にして「この薬を使ってほしい」などと医師に訴える場面も増えてきました。患者さんのライフスタイルや、治療費はいくらまでなら払えるかといった価値観とエビデンスを照らし合わせて治療法の選択に行き着く、インフォームド・ディシジョン(informed decision)の時代が到来しています。

 こうした流れの中で、我々、疫学や生物統計学の研究者の役割も変わってきています。この分野の研究は、20年前まではデータ解析が中心でした。その後、目的のデータをどのようにとるかという試験デザインの研究が隆盛となり、現在は、研究結果のコミュニケーションがテーマになりつつあります。つまり、得られた研究成果、エビデンスを一般国民や患者さんが理解できるように翻訳し、伝えていくことの重要性が高まっているのです。
 

 皆さんはこんな事実をご存知ですか? 国民の税金を使って行われた重要な疫学調査の結果も、その価値が高いものであればあるほど、国際的な評価が高い論文誌に発表されることが多いことを。つまり、私たちの日常言語、日本語ではなく英語で発表されるのです。
 学術英語に長けている方であれば、PubMedで調べ、医師に「この薬を使ってほしい」という行動にも出られますが、一般的には、「英語圏の人たちは知っているが、日本人は知らない」というケースも多くなります。せっかくの研究成果を私たちが利用できないのでは意味がありません。
 国民の皆さんに重要な研究の成果を伝えていく方法を確立しなければなりません。そのためには、健康・医療情報に敏感で、また正しい情報は何かを判断できる人を増やす必要があります。この点で、私もカリキュラムの監修をしている「健康美容情報認定講座」に期待をしています。

  PubMed=パブメド。
    米国立医学図書館の国立生物工学情報センター(NCBI)が運営する医学・生物学分野の学術文献検索サービス。主に英語の論文誌に掲載された論文の題名、著者、発行年、要約などを、無料で検索・閲覧できる。

●大橋靖雄氏がテキスト監修を担当した「健康美容情報認定講座」の講義詳細はこちら
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