サラダ油やバターといった調理に使う油の摂取量に気をつければ、脂肪のとり過ぎをかなり抑えられる?
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答えは、“NO”です。
意識して気をつけないと、知らないうちにとってしまう油が結構あることをご存知ですか?
今、私たち日本人は平均して1日に55.2gの油をとっています。そのうち植物油やラードといった調理に使う「見える油」をとる量は1日12gくらいで全体の2割程度。残り8割は「見えない油」、つまり食材などの中に隠れていて見えにくい状態でとる油なのです(図1)。
図1:日本人の一日の平均油摂取量に占める「見える油」と「見えない油」の割合 |
もっとも比重の高いのはそれだけで1日の油摂取量の2割に達する肉に含まれる油のようですが、「脂身の多い肉の食べすぎには気をつけている」という方にお聞きします。
たとえば、あなたはサラダのドレッシングやパンは油源として意識していますか?
まず「健康のためにたくさん食べなきゃ」と食べるサラダ。それにかけるドレッシングは下手をすると油の塊です。ちょっと油が多めのドレッシングだと、すぐに1日の1割から2割(6~12g)くらいの油をとってしまいます。しかも、煮るなどしてカサを減らして食べるときと比べて、摂取する野菜の絶対量も少ない。実は、生野菜のサラダは一歩間違えると、野菜摂取効率が悪く油リッチなメニューになりかねないのです。
次に、女性が大好きなパン。そうですねえ。なかでもフランスのかぐわしさをまとったクロワッサンについて考えてみましょう。パンは生地にも油を練り込むことが多いので「見えない油」の中でもクセモノ度が高い食品ですが、たっぷりのバターを練り込むクロワッサンなんて、なんと1個で1日の油摂取量の2割超(12.5g)にも達するのです!
閉経に伴って女性ホルモンが激減することで、増やしたくない悪い脂肪=内臓脂肪が増え始める50代女性の油の摂取状況を見てみましょう(図2)。
下のグラフを見てください。油をとりすぎている50代女性は53.6%、過半数に達します。
図2:総摂取エネルギーに占める脂肪からのエネルギー比率 |
油をとりすぎると体脂肪に変わり、肥満を招きます。中でも問題視されているのが肉や乳製品に多く含まれる飽和脂肪酸という油です。これをとりすぎると悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らします。また、飽和脂肪酸が多い体脂肪が増えると、インスリンというホルモンの効きを悪くして糖尿病の原因になったり、いろいろな病気のもとになる“炎症”を引き起こしたりするからです。
「見えない油」コワイですよね?
もちろん「見えない油」のなかには魚介類からとる油も含まれます。これはコレステロールを下げたり、アンチエイジングに役立つホルモンを増やしてくれたりするのですが、残念ながらこちらは相対的な摂取量が下がっているんです(図3)。ここ20~30年の日本人の脂質摂取をみると、肉の脂肪と調理油などでとる植物性脂肪が増えているんですね。
図3:日本人の脂肪摂取量の推移 日本人の脂肪摂取量は戦後から増え続け、この20~30年は横ばい傾向だが、摂取量が増えたのは魚油以外の動物性脂肪や植物性脂肪だった。 ※国立健康・栄養研究所「国民栄養の現状」レポート、1993年、2002年 ※日経ヘルス プルミエ2010年8月号に掲載 |
「あんまり量は食べてないのにどうしてやせないのかな?」 ふとそんなことを思う方は、一度ご自身の食事に占める「見えない油」について考えてみてください。
そしてその中で「良い油」とされる魚の油がどのくらい含まれているかについても。
油はとる量だけでなく、質も健康や美容に看過できない影響を及ぼしているのです。
【 筆者紹介 】 |
西沢邦浩(にしざわ くにひろ) 日経BP社 プロデューサー 1961年長野県生まれ。小学館を経て、91年日経BP社入社。開発部次長として『日経エンタテインメント!』創刊や、マイクロソフト社との共同事業『日経BPソフトプレス社』の創業などに携わる。98年『日経ヘルス』創刊と同時に副編集長に着任。2005年1月より同誌編集長。2008年3月に『日経ヘルス プルミエ』を創刊し、同誌編集長を務める。2010年7月より日経BP社プロデューサーと関連会社(株)テクノアソシエーツ、ヴァイス・プレジデントを兼務。 |