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日本人の生活習慣病を防いでいたと考えられる食材は?
1.白米 2.小麦 3.雑穀

[ 2010年8月10日 ]


[ 筆者 ] 西沢邦浩
日経BP社プロデユーサー
「日経ヘルス」「日経ヘルスプルミエ」前編集長


[ 関連キーワード ]
雑穀、アディポネクチン、βグルカン、水溶性食物繊維、糖尿病、大腸がん


 正解は3
やはり雑穀こそが強い味方です。

 日本人は、ほんの100年の間に食べ物に関して同じ過ちを繰り返しました。
 しかもそれは私たち日本人が長い間大切にしてきた主食の「米」に関する過ちです。

 庶民は基本的に食することを禁じられ、貨幣同等として扱われてきた米。しかし、日本に初めての庶民文化が花開いた江戸時代も、元禄を過ぎるころになると、江戸市民の中には白米を口にできる人たちが増えてきました。そうして起きたのが“江戸わずらい”。ついに思う存分食べられるようになった白米に舌鼓を打ち続けた結果、玄米や大麦には含まれているビタミンB1が不足して脚気にかかる人が増えたのです(でもB1が多い胚芽を含むソバを食べている貧乏な庶民には起きなかった)。

 さて、維新を成し遂げた明治政府は、それまでの日本の食生活や漢方を否定し、徹底して西洋を見つめました。そのため、江戸わずらいの記憶も知恵も失われてしまいました。そして、またしても“江戸わずらい”が起こりました。その不勉強のために多くの犠牲者を生んだのが日露戦争。白米中心の食事を推進した陸軍に多くの脚気の死者が出たのです。麦飯を導入した海軍ではこれを防ぐことができました。
 歴史は繰り返します。

 もう一つ、驚くべきグラフを紹介しましょう。これは、「日経ヘルス」で2008年に作ったものです。戦後、一からの復興になった日本は朝鮮戦争などを契機に、復興の波に乗ることができました。このときも実は背後で雑穀が日本人を支えてくれました。しかし、残念ながら、またしても明治維新時代と同じように、1964年の東京五輪、1970年の大阪万博を経て一気にゴージャスな洋食への道を歩んだ日本人は、雑穀をほとんど顧みなくなっていきます。
 ここでいう統計上の雑穀とは、米、小麦を除く「大麦その他の雑穀」です。
 グラフには一種の偏りがあるかもしれません。しかし、日本人の雑穀消費量がほぼゼロになる1970年あたりから、食事に大きな影響を受けていると考えられる代表的な生活習慣病、「糖尿病」「大腸がん」の患者数はうなぎ昇りに増え続けていることに目をひかれない人はいないのではないでしょうか(図1)。


図1:雑穀離れ、脂肪過多の食事・・・。そして病気が増えた

図1:雑穀離れ、脂肪過多の食事・・・。そして病気が増えた
(日経ヘルス2008年6月号に掲載)


 ときは過ぎ、玄米菜食がマクロビオティックと翻訳されて欧米に広がり始め、ついにマドンナといったセレブまで食べているという情報が流れるとともに、2000年を過ぎるころ、雑穀文化は“ファショナブルな食事スタイル”という形容詞をまとって再上陸、日本人は雑穀を再発見することになったのです。

 そんな中、いよいよ雑穀が秘める力が明らかにされ始めました。大麦、ひえ、あわ・・・・・・玄米も含めた雑穀が共通するのは、ビタミンB群を中心とするビタミン、そして代謝に関連するミネラル、マグネシウムや食物繊維の豊かさです。
 米国のハーバード大学は、興味深い研究を発表しています。
 それはこういうものです。

 「代謝を改善し、生活習慣病を防ぐホルモン“アディポネクチン”の量は、ほかの食品よりも穀物から食物繊維をたくさんとっているほど多く出る」(図2


図2:穀物で繊維を多くとる人は代謝改善ホルモン量が多い

図2:穀物で繊維を多くとる人は代謝改善ホルモン量が多い
(Diabetes Care, volume29, Number 7, July 2006)


図3:大麦は水溶性食物繊維の宝庫(100g中の含有量)
(五訂増補食品標準成分表の数値をもとに日経ヘルス プル
ミエが作成。大麦(もち種)のデータは永倉精麦による。)

 やはり、精白しない穀物を取ることは私たちの健康維持にとって大切なことだったのです。中でも今注目を浴びているのが、麦ご飯に入れる大麦。図3を見てください。玄米、サツマイモ、ゴボウ・・・・・。食物繊維が豊富な食材と大麦が含む食物繊維の量を比べたものです。
 大麦の食物繊維量は総量でも多いのですが、注目すべきなのは水溶性食物繊維の多さです。大麦はβ(ベータ)グルカンという水溶性食物繊維を特異的に多く含みますが、これは腸内の善玉菌のエサになり、血糖値やコレステロール値の上昇を防ぎ、また内臓脂肪を減らし、免疫力を高める作用も確認されています。

 最近では、βグルカンが多く味もいい大麦が開発されつつあります。

 温故知新。

 先祖が選んだ食生活は、私たちを生活習慣病から救うヒントに満ち溢れています。



【 筆者紹介 】

西沢邦浩

西沢邦浩(にしざわ くにひろ)
日経BP社 プロデューサー
1961年長野県生まれ。小学館を経て、91年日経BP社入社。開発部次長として『日経エンタテインメント!』創刊や、マイクロソフト社との共同事業『日経BPソフトプレス社』の創業などに携わる。98年『日経ヘルス』創刊と同時に副編集長に着任。2005年1月より同誌編集長。2008年3月に『日経ヘルス プルミエ』を創刊し、同誌編集長を務める。2010年7月より日経BP社プロデューサーと関連会社(株)テクノアソシエーツ、ヴァイス・プレジデントを兼務。
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