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・・・「おいしく安全」な食生活のコツは? たくさんの情報が入手できるからこそ、それを読み解く力が必要なのです。 [9月24日]

日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会 消費生活研究所 主任研究員 戸部依子氏

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 食の安心・安全や健康への関心が高まり、メディアやインターネットなどを通じて膨大な情報が流通する中、消費者はどのようなスタンスで情報を見極め、判断していけばいいのか。日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会の主任研究員で、日経ヘルス、日経ヘルスプルミエが主催する健康美容情報認定講座の講師を務める戸部依子氏に、食の安全性や食品流通という観点から、消費者に求められる情報リテラシーに関して話を聞いた。

− 消費者の食品表示や安全性に対する関心が高まる中、事業者が届ける情報は十分に伝わっていますか?

 インターネットの普及に代表されるように情報がいつでもどこでも入手できるようになったことで、言葉としての情報量は増えてきています。情報発信が容易になり、事業者の方も多量の情報を発信するようになっています。一方で、言葉だけがひとり歩きし、その背景や意味がうまく伝わっていない、理解されていないという、ずれを感じています。
 例えば食品の場合、以前に比べて賞味期限が延びてきています。この情報を聞いたとき、消費者の中には、「保存料が多く含まれるようになったのでは?」と捉える人もいます。もちろん保存料も一つの要因ですが、それ以外にも原料の取扱いや製造現場の衛生管理、包装材料の密閉性向上など、様々な要因が重なって、賞味期限は延びています。こうした背景が全く伝わらず、「賞味期限が延びた」という結果ばかりが強調されて伝わってしまっています。

− 情報の受け手となる消費者は、どのような姿勢で情報に接するべきでしょうか。

 情報を正しく理解し、選択していくために、消費者に伝えていることは、「どうしてそうなのか?」という疑問を常に持ちながら情報に接するということです。新聞や雑誌、書籍を読んだり、専門家の話を聞いたりして知識・情報を幅広く持つことも大切ですが、これらの知識・情報を正しく解釈するためには、裏側にある背景や要因に近づく必要があります。
 例えば、体にいいと言われたら、どうして体にいいといえるのか、という疑問を持つことが、そのスタートになります。その上で、消費者が自ら安全性や効果に関する情報を収集し、読み解く力を高めていくことが、情報リテラシーの向上につながります。入手できる情報量が劇的に増えた今、従来以上に情報を見極める力が求められています。
 表面的な情報や結果のみを鵜呑みにして間違った理解・思い込みをしてしまうと、本当はおいしく安全に食べられるものも、食べられないといった状況を招いてしまいます。昨今の食品回収事例の一部にも、こうした誤解による過剰反応も見受けられます。これは、消費者にとっても事業者にとっても不幸なことですし、無駄な食品廃棄につながるという面においても大きな損失です。健全な食品流通を促進し、安全な食生活を実現していくためには、我々消費者の情報リテラシーの向上が欠かせません。

− 食品には、原材料や賞味期限、消費期限、保存方法などさまざまな情報が表示されています。どの情報を理解すればいいのか、分からない消費者も多いのではないでしょうか。

 情報に自分なりに優先順位をつけて、理解していくことが大切です。食品の表示についても、安全性に関する部分は、特に重要です。具体的には、アレルゲン、保存方法や調理方法に関する情報です。薬を飲んでいる人は、薬の作用に影響する成分に気をつけなければならない場合もあります。健康管理上、栄養成分表示に気をつける場合もあります。
 また、こうした食品表示に関しては、生鮮食品、加工食品、調味料、飲料など、食品の種類や表示する内容によって細かな規定があります。情報を正確に理解するためには、これらのルールの存在も知っておきたいものです。
 ちなみに、何らかの不具合があり自主回収された食品事例のうち、約50%は「期限表示の誤記」や行き過ぎた広告コピーなどの「不適切な表示」といった、食品の品質そのものには大きな影響がないと考えられる原因によるものです。食品産業センターの食品事故情報告知ネットの調査によると、2009年度の回収告知事例は618件となっています。そのうち、「期限表示の誤記」と「不適切な表示」は、それぞれ、152件、180件、計332件で、全体の53.7%に上ります。

− 安全性以外の問題で回収される事例が多いんですね。消費者は、食品の安全性をどのような視点で捉えていけばよいでしょうか?

 「どれを食べたら安全ですか?」という質問をよく受けますが、どれを食べるかではなく、どのように食べるかが重要だということを話しています。フグの毒であるテトロドトキシンやじゃがいもに含まれるソラニンなどは典型ですが、これを取り除いて食べることで我々は安全性を確保しています。水にだって致死量があるように、どんな食品も完全に安全とはいえませんし、不適切な取扱いをすれば、新鮮な食材も腐敗します。逆に言うと、どんな食品にもリスクがあるという前提で食の安全を考え、上手に選んでおいしく食べることが、大切です。

戸部依子氏が担当する「健康美容情報認定講座」の講義詳細はこちら
「知っておきたい食品表示・表現のからくり&栄養基礎知識」

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