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「機能性おやつ」で日本人の健康を守る!――おやつ素材としての注目株は“ゴボウ”
~東京海洋大学大学院 矢澤一良教授に聞く~ [8月22日]

東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科ヘルスフード科学講座客員教授 矢澤 一良 氏

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 ともすれば、つい何度も手が伸びて糖質や脂質のとりすぎ原因ともなりかねない「おやつ」。ならば一層のこと、おやつの美容・健康機能を高めたら、効果的な病気予防手段にできるのではないか―――。こんな、ユニークな試みが始まっている。
 中心となっているのが、機能性食品研究の第一人者で東京海洋大学大学院の矢澤一良教授。2010年1月「日本を健康にする!研究会」*が発足し、健康食品メーカー、機能性素材の原料メーカーなど31社が参加、「機能性おやつ」を開発するプロジェクトが進められている。既に、この研究会を通じてDHA、EPA入りのヨーグルト、などの製品も上市されている。「機能性おやつ」の可能性、今後、期待できる市場について矢澤教授に聞いた。

― 機能性おやつプロジェクトは何を目指しているのですか?

 「おやつ」は毎日の食事の間に摂る補助的な食事ですが、妊婦から子供・高齢者から学生やビジネスパーソンまで、そしてあらゆるライフステージ、生活シーンの中で必要とされています。しかし、これまでは、補助的な存在であったためにその本来の役割に陽があたることはなかった。しかし、利用場面が多岐にわたる「おやつ」に機能性を付加し、その価値をうまく活用することができれば、食生活全体のバランスを整えることができる。結果として美容や疾病予防、QOLの向上に役立つと考えたのです。

― 「機能性おやつ」という言い方で「おやつ」という言葉にこだわったのはなぜですか?

 「おやつ」という言葉には、「スナック」や「間食」といった言葉にはないポジティブな響きがあります。最近では「間食」そのものを悪者扱いする傾向さえありますが、むしろ「おやつ」を利用して、食生活全体を見直す機会にしたり、食育のための手段にしていくなど前向きに考えることができます。
また粒状のサプリメントに馴染めない人もいますので、無理なく継続して機能性成分を摂取できることも魅力です。
 現代日本人の食生活を考えた場合、食後高血糖の問題が大きくクローズアップされています。厚労省の発表では、約20年前の1990年には、いわゆる糖尿病とその予備軍といわれる人は合計775万人でしたが、2007年には、その3倍の2210万人まで急増しました。このままでは1億総糖尿病化時代がやってくるといっても過言ではありません。
 こうした状況に対して、例えば、食物繊維を豊富に含むおやつを間食としてとることで、血糖値の上昇を緩やかに抑えることができれば、おやつが糖尿病予防策のひとつになる可能性もあります。甘いものや間食を禁じられるストレスからも解放されます。

― 脇役だった「間食」を軸に食生活を見直すというのは面白い戦略ですね。


 厚生労働省・農林水産省が発表している「食事バランスガイド」(図1)では、食生活全体を独楽(こま)のイラストに例えていますが、その中で菓子・嗜好飲料は、楽しみと考えられ、イラスト上では独楽を回すヒモ(原動力)として表現されているように、おやつは、現代の食生活を回していくためには、なくてはならないものです。
 一方、食生活全体がスナック化していることが指摘されていますが、そうであればなおのこと「おやつ」を利用することが、食生活全体を見直す上でとても有効な戦略になるのではないかと考えています。

oyatsufigure1.jpg― 機能性おやつとして今後どのような食品、製品が出てくるでしょうか。

 研究会に参加している企業からは先にも触れた「DHA+EPA1000ヨーグルト」(ノーベル)という、炎症を抑えたりケ血液をサラサラにするといった働きを持つ魚油、DHAとEPAを配合したヨーグルトが既に上市されていますが、その他にも機能性おやつに利用できる素材はいろいろあります。
 例えば、「ゴボウ」。ここ数年、ショウガブームがありましたが、これは、ショウガが持つ、体温を高めたり、めぐりを良くするという機能性が注目された結果でした。
 ゴボウには、イヌリンなど生活習慣病予防作用が注目される水溶性食物繊維や腸の善玉菌の餌になるオリゴ糖が豊富であり、クロロゲン酸という抗酸化力の高いポリフェノールもたくさん含まれています(クロロゲン酸含有量は野菜の中でトップレベル)。

 中国では、ゴボウは野菜としてではなく生薬素材として扱われているように、もともと高い健康効果で知られる野菜です。ゴボウ食は日本の食文化ですが、今後は機能性食品素材として世界的にも注目され、海外にも広がっていくのではないでしょうか。
 最近では、さきがきしたゴボウを天日干しして焙煎した「ゴボウ茶」が日本でもブームになっているようです。また、焙煎してお茶にするとさらに抗酸化力が高まるというデータも出ています(図2/ごぼう天国より)。

oyatsufigure2.jpg 今後は、ゴボウを様々な形態に加工して手軽に摂取するという動きが広がるのではないかと期待しています。ゴボウ茶だけでなく、ゴボウクッキー、ゴボプチップスとといった「機能性おやつ」にすることができれば、手軽に食物繊維をとることもできます(図3)。

oyatsufigure3.jpg 前述したように、日本人の食後高血糖をコントロールするという観点からも、食物繊維をとる機会をできるだけ多くしていくということは「機能性おやつ」に求められる大切な役割になると思います。


<矢澤 一良(やざわ・ かずなが)>
1972年京都大学工学部工業化学科卒業。ヤクルト本社・中央研究所入社、微生物生体研究室勤務。その後、相模中央化学研究所に入所、東京大学より農学博士号を授与される。現在東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科ヘルスフード科学講座客員教授。

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著者:テクノアソシエーツ 加藤芳男

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