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歯科を"健康の門番"に! 健康美容コミュニケーターのスキルを歯科医院で発揮 歯科衛生士として活躍する2人のコミュニケーターにインタビュー [12月18日]

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2010年にスタートした健康美容情報認定も2012年11月には8期を終了し、すでに約200人の健康美容コミュニケーターが誕生。講座での学びを、仕事に積極的に生かしている事例も多い。その代表例として挙げられるのが「歯科医院における患者さんとのコミュニケーションの向上」。歯科衛生士の資格を持つ健康美容コミュニケーターの二人、まさき歯科(名古屋市中村区)の大野幸恵さん、ふじもと歯科医院(熊本県荒尾市)の松山香代子さんに話を聞いた。聞き手は日経BP社プロデューサーであり、本講座の講師も務める西沢邦浩。

「あいまい」から見えてくるように
西沢 講座受講後、毎日のお仕事の中で、何か変化はありましたか。

大野 以前ohno2.jpgは、患者さんにいろんな情報をお伝えするために、新聞やテレビ、雑誌や本を読み、自分でも考えてはいたのですが、何かとあやふやで曖昧でした。広く浅く、なんとなく知っていることは多かったのですが、講座を受けてからは、何かが見えてきたというか、深く知ることができるようになり、さらに深く考えられるようになりました。患者さんへの情報の伝え方も、自分自身の毎日をどう過ごすかについても、大きく変化しました。

松山 私たち歯科衛生士は、歯科のことは頑張って勉強してきましたが、そこからどう間口を広げていくかを模索しています。講座では、全身の健康に関わることを体系立てて学習でき、「見聞きはしていたけれど、よく知らない」ということから、全然知らなかったことまで、少しずつ分かってきました。歯周病や虫歯、噛み合わせなどについては、これまでにも患者さんにお話してきましたが、健康に関する全般的なことも少しずつ話せるようになりました。

患者さんとのコミュニケーションが広がった
西沢 講座で学んでいただいた情報や考え方のうち、患者さんたちの反応がいいのは?

大野 年配の方は、歯周病と密接な関係がある糖尿病の話をすると、身を乗り出して聞いて下さいます。若い方では、糖って何?というところからお話すると、白い砂糖のことだけを意識してればいいわけではない、ということが分かってもらえたり、「低糖」や「無糖」といった商品表記ことも、写真で具体的な商品を見せて説明すると、「じゃ、ちょっと気をつけて買わなくては」ということになってきたり。

松山 やはり患者さんご自身が、気にされている情報に強い関心を示されるというのが、よく分かるようになりました。例えば、ご家族にメタボや糖尿病の方がいれば、そのような話とか。家族の中で、誰がどの病気を患ってらっしゃるかが分かると、「では、こういう調理方法もあるでしょうね」などと話が広がります。

西沢 院内のほかのスタッフの方にも、講座で学ばれたことを話されますか?

松山 腸内細菌が全身にさまざまな影響を与えていて、美肌やメタボ予防につながるというような話をしたら、「じゃ、ヨーグルトを食べてみよう」とか、今みんなで実践しています。そして、各スタッフが自身の体験を踏まえ、患者さんにも同様に話をしているようです。

口から見える全身の兆候
西沢 患者さんの口の中のことだけではなく、全身の健康に考えが及ぶようになってきた、ということでしょうか。口の中をチェックすると、全身の状態を反映するいろんな情報が得られます。
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松山 患者さんご自身はきっと「歯科とは関係ない」と思ってお話しされている内容から、「この方は薬剤性のドライマウスではないか?」と疑うこともできたり。よくよく話を聞いてみると、ものすごい数の薬を服用されていて。「お医者さんに、薬を減らしたり変えたりできないか相談してみては」とお伝えすることもあります。

大野 この人の歯はどうしてこんなにボロボロになっているんだろう、と思って耳を傾けていると、メンタルの問題が表れてくることもあります。口の中が酸性に傾いて歯を溶かす「酸蝕歯」になっていたのですが、過食症で、食べては吐くを繰り返すうちに胃酸で歯が溶けてしまったんですね。話を聞いているうちに、泣きだされるようなこともありました。

西沢 首から上というのは、いつも人目にさらしている部分。目つきや肌などから得られる情報も多いわけですが、歯科医院では特に、患者さんが全てを無防備にさらしていますから。いろんな情報がキャッチできますよね。

大野 歯周病の方は肌ツヤも悪くて、歯周病を治すと肌もきれいなるというのを、よく目の当たりにします。

松山 喫煙している方って、肌をみるとすぐ分かりますしね。

口腔内を超えてメンテナンスを
大野 歯科は、歯を治すだけではダメだと感じる例として、こんなことがありました。歯が弱って食も細くなってしまっていた方が、インプラントにしたんですね。よく噛めるようになり、からだも元気になったと患者さんはとても喜んでらしたのですが、その後、食べ過ぎて太ってしまったんです。歯を治したのはいいけれど、別の問題が生じてきたわけです。メンテナンスというのは、口の中に留まってはいけないと痛感しました。食べ過ぎや糖尿病などのリスクのことを踏まえたアドバイスも必要です。

西沢 インプラントの話もそうですが、講座の受講後、ライフスタイルと口の中が、密接につながっていると改めて感じたことはありますか。

大野 やはり健康のことを考えて食事をされている人と、好きなものを好きなように食べている人は違うな、と。気にかけている人のほうが、口の中のケアもしっかりできているようです。

松山 交代制の勤務があって生活のリズムが崩れやすく、忙しくて食事の時間も十分にとれないような職業の方は、歯周病や虫歯を持っていることが多いんです。きちんとケアしたくても手をかけられないうえに、間食も多いんだろうなと感じます。

西沢 そういう方には、どのようなアドバイスを?

松山 講座で学んだことを生かして、例えば、夜中の間食は、チョコレートなどの甘い菓子ではなく、たとえば血糖値を上げにくい納豆にしてみては、とか。特に女性の方には、甘いもののとり過ぎは、肌にもよくないというお話をすると、間食を見直すきっかけになるようです。

医科と歯科の連携が大切

nishi2.jpg西沢 患者さんの見方が変わったというか、広くなったということでしょうか。

大野 最初は、口の中のこととは関係がなさそうな話をしていることにびっくりされることもあります。でもそのうち「右上の歯が痛いが、実は以前にこんな病気をしたことがあって......などというように、問診票には書いてなかったお話しが出てきたり。そこから患者さんの、たとえば噛み癖を知ることができたり、どうしてこの歯はなくなってしまったのかという、"オーラルヒストリー"が見えてきます。歯科の役割は、そこにある1本の虫歯を見ることではない、と感じています。歯や歯周組織というのは、体外からも、体内からもつながりを持つ場所なんですね。メンタルや脳とも。

西沢 患者さんの全体を知り、適切なアドバイスをするためには医科との連携が重要になってきますね。

大野 以前に比べると、医科の歯科に対する理解も進んでいるのを感じます。糖尿病の専門医から、(糖尿病と相互に影響し合っている)歯周病の患者の紹介があったり。少しずつ良い方向に動いています。

松山 心臓のバイパス手術の前に、「歯周病を治してくるように」と言われたという患者さんもいます。

西沢 外科手術の前に、できるだけ炎症の原因になるようなものをなくしておこう、ということですね。

大野 患者さんも、たくさんの情報を持っていますから、何か聞かれたとき言葉に詰まるようなことがないように、私たちは、もう少し深く勉強しなくては、と感じます。

松山 「この研究のエビデンスレベルはどうなのか」といったことが考えられるようになり、患者さんやスタッフに情報を伝えるうえで役立っています。患者さんから教えていただくことも多いのですが、それについて適切な"お返し"ができるようにならなくては、と思います。

西沢 口はまさに「体の窓」。口腔内からは、ストレスホルモンや性ホルモンなどの量といった、健康に関する重要な情報も得られます。そして、口の周囲に広がる顔の肌の状態や弾力から、骨粗しょう症の進行まで予測できるという研究も。そのように多様な情報を入手できる立場にある健康の専門職として、私たちの健康を支えていただきたいと思います。今後ますますご活躍されるよう期待しています。

(健康美容情報認定カリキュラム編集委員会まとめ)


##プロフィール(50音順)
大野 幸恵
愛知学院大学付属歯科衛生士専門学校(現:愛知学院大学短期大学部歯科衛生学科)卒業。医療法人昌学会まさき歯科勤務。日本口腔インプラント学会会員。同学会専門歯科衛生士取得。日本臨床歯周病学会会員。同認定歯科衛生士取得。スタディグループSJCDメンバー。スタディグループMDIメンバー。

松山 香代子
九州医療専門学校歯科衛生士科卒業。ふじもと歯科医院勤務。日本歯周病学会認定歯科衛生士。日本抗加齢医学会会員。歯科医療提供のための知識と技術のスキルアップ、アンチエイジングのためのヘルスマネジメントを目指すA.A.C.H.C(Anti-Aging Clinical Hygienist  Course )をプロデュース、インストラクターも勤める。


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