Kenbiコラム
第22回
普段から運動している人は乳がんにかかりにくい? [9月22日]
- 乳がんが発症するリスクが下がる可能性大です。
- 乳がんは、今や16人に1人がかかる病気。早期に見つければ命を守れますが、人生真っ盛りの女性にとって、乳房と命を脅かす存在といえます。生活習慣を改善することで少しでもそのリスクを減らせるなら、積極的に取り入れていきたいものです。
閉経後女性では、ある種の乳がんのリスクが4分の1に
乳がんのリスクを減らす可能性が報告されている代表的な生活習慣が「運動」です。例えば、国立がん研究センターなどによるチームが、岩手県や長野県、大阪府などに住んでいる40~69歳の女性約5万人を、平均14.5年間追跡調査した研究があります。調査開始時(1990年または1993年)とその5年後にアンケート調査を行い、運動の頻度と乳がんにかかるリスクとの関係を報告。
この研究によると、運動の機会が週3日以上ある人(積極的に運動する人)は、月に3日以内しか運動しない人に比べ、乳がんにかかるリスクが27%低いということが分かりました。さらに、閉経した女性では、"ある種の乳がん"にかかるリスクが同75%も低いという結果に(Prev Med.52(3-4),227-33,2011)。
さまざまなタイプがある乳がん
ところで皆さん、乳がんと一言でいってもさまざまなタイプがあることをご存知ですか? 乳がんは、女性ホルモンの影響を受けるかどうかと、HER2(ハーツー)と呼ばれるたんぱく質がたくさんあるがんかどうかで大きく分類されます。約7割は女性ホルモンの影響を受けるタイプ、ホルモン受容体陽性乳がんです。前述の研究の「ある種の乳がん」とは、このホルモン受容性陽性乳がんのことです。
閉経後の積極的な運動は、ホルモン受容体陽性の乳がんのリスクを低下させるといえそうです。ただし研究チームは、「乳がん予防に有効な運動の種類や閉経状況による効果の違い、乳がんのタイプとの関連などについては、さまざまな報告があり、今後の検討が必要」としています。
ちなみに、今年9月に日本乳癌学会が発表した「科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン 2疫学・診断編 2011年版」(発行:金原出版)では、閉経後女性では運動が乳がん発症リスクを「ほぼ確実に減少させる」と結論付けているほか、大豆の摂取は閉経状況に関係なく「可能性あり」とされています。
いずれにせよ、適度な運動は、乳がんに限らず、肥満や生活習慣病、認知症などの予防効果が期待できます。ぜひ習慣にしていきたいですね。(関連コラム)。
家事をよくする女性は乳がんにかかりくにい?!
そうはいっても、仕事やプライベートに忙しい女性には、週3日以上の運動というのはなかなか厳しいかも。そんな方に朗報です。
欧州9カ国の女性約22万人(20~80歳)を6.4年間追跡した研究では、あえて特別な運動をしなくても、掃除や洗濯、炊事といった日常の家事が乳がん予防に役立つことが報告されています(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev.16(1):36-42,2007)。家事による活動量が最も多い人(週90メッツ*以上)は、最も少ない人(週28メッツ未満)に比べ、乳がんのリスクが閉経前女性で29%、閉経後女性で19%低かったのです(図)。 家事をしっかりすれば、特に運動時間をとらなくても乳がんのリスクも減るなんて! 部屋もきれいになって心もスッキリするし、まさに一石二鳥ですね。
美と健康についてのコミュニケーション力を高めるカリキュラムのススメ
もちろん、家事や運動だけでなく、食生活や飲酒、喫煙など、生活習慣をトータルに改善することも乳がん予防のためには大切。
でも、乳がんはもちろん、ほかの病気を防ぐための対策もどうせならしっかりした医学的な根拠があることを取り入れたいですよね。そのためには、信頼のおける情報源から情報を入手し、さらにそれを正しく読みとくコツを身につけることが必要です。
"エビデンスに基づく正しい健康美容情報の提供"を行ってきた日経ヘルス、日経ヘルス プルミエでは、こうしたノウハウをカリキュラムにまとめ、健康美容情報認定講座「健康美容コミュニケーターコース」として編成しました。
10月13日に開講する第5期では、今、最もホットな美容トレンド「抗糖化」にスポットを当てた講義も。講師は、日本における肌の糖化研究の第一人者で、エイジングケアのトップブランド『B.A(ビー・エー)』の開発に携わるポーラ化成工業の多田明弘さん。肌の若さを保つための最前線理論を学び、効果的なスキンケアは何かについて一緒に考えましょう。
*メッツ:運動によるエネルギー消費量が安静時の何倍にあたるかを示す単位。家事1時間は3メッツ、ウオーキングは同3メッツ、ガーデニングは同4メッツなどとされる。
- 第28回 食べ過ぎを抑えたいと思う時に、食べるといいものは次のうちのどれ? 1.甘いお菓子 2.パン 3.白米ご飯 4.麦ご飯 5.野菜サラダ [11月13日]
- 第27回 ダイエットのためには、エネルギーを少しでも多めに使うよう睡眠時間を短めにした方がいい? [3月27日]
- 第26回 喉が渇いたあなたの前に、水が半分入ったコップがあります。あなたは「もう半分しかない!」と考える"先回りタイプ"ですか、それとも「まだ半分ある」と考える"お気楽タイプ"ですか? 実は、どちらのタイプかで"寿命"の長さが変わる可能性があります。さて、どちらが、長生きできる可能性が高いでしょう? [1月9日]
- 第25回 ダイエットの味方になる間食がある? [10月25日]
- 第24回
傷んだ肌のお手入れに使用されるピーリング。最近明らかになった、ピーリングの仕組みとは?
(1)古くなった肌の細胞を溶かし、下にある新しい肌を表面に出す
(2)古くなった肌の細胞の働きを止めて肌からはがし、新たな肌の再生を促す
(3)ピリピリした酸の刺激で、肌のコラーゲンなどを生み出す線維芽細胞のスイッチをオンにする [9月11日]
関連ページ
- 企業講義(「トレンド体験」)レビュー
注目のトレンド商品、エビデンスを紹介します