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Kenbiコラム

第16回
外から中身が見えない「お楽しみ袋」。高級化粧品が入っててラッキー!ということは基本的にはありえないって知ってた? さて、その一番正しい理由は?
(1)対面販売が基本の商品だから  (2)ビンが割れたりする危険性があるから  (3)商品の内容が確認できないから [7月13日]

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(3)の商品の内容が確認できないから。でも、実際には「お楽しみ袋」「福袋」として売られていることも・・・・・・。
 サマーセール真っ盛りですが、セール時期には、外から中身が見えないけど、お買い得品が入っている「お楽しみ袋」を用意している店もあって、つい手が伸びてしまいがち。「お楽しみ袋」の代表といえば正月の初売でおなじみの福袋ですが、福袋はたいてい「○○万円分の商品が入っています」なんて書いてあるからワクワク度もアップ。中身が高級化粧品だったら、そりゃうれしい!

 ところが、実は化粧品(医薬部外品も含む)を中身の見えない福袋のような形式で販売することは、法律に違反しちゃう可能性があるんです。
 薬事法という法律によって、化粧品が入っている容器には使用しているすべての成分(医薬部外品の場合は有効成分のみ)、製造販売業者名などを表示することが義務付けられています(これを法定表示といいます)。さらに、その化粧品を不透明な箱に入れるなどして、直接の容器に表示された「法定表示」が外から見えなくなってしまう場合は、その外側の箱にも法定表示をする必要があります。
 つまり、化粧品は、「購入時に何が入っているか分からない」=「法定表示が見えない」状態で販売することは認められていないのです。そのため、化粧品を"不透明な袋"に包まれた「お楽しみ袋」や「福袋」で販売する場合、その袋にも法定表示をしなければなりません。

  でも、中に何が入っているか分かっちゃったら、「お楽しみ袋」じゃないですよね。

 では、なぜこのような規制があるのかを説明しましょう。皆さんは、自分の肌に合うかどうかを考えて、化粧品を購入しますよね? 人によっては特定の成分で肌にアレルギーなどの障害が起こる可能性もあります。こうした事故を未然に防止するために、化粧品を選択する際の一定の判断基準として法定表示を義務付けているわけです。

  なんとかして、化粧品入りお楽しみ袋の販売を認めてもらう方法がないのでしょうか。「お楽しみ袋自体ではなく、POP(店頭の販売促進用広告)やポスター等に法定表示をすることで代用できる?」(例えば、POPで「これらの福袋にはここに挙げた化粧品のいずれかが入っています」と表示し、店頭カウンターに入っている可能性があるすべての化粧品の現品または空箱を置き、消費者が法定表示を確認できるようにする)と、東京都広域監視部薬事監視指導課に問い合わせてみました。
 答えはつれないというか、不明瞭というか・・・・・・。
 「薬事法上の観点からはお勧めはできない」とのこと。

 でも、実際に皆さんは化粧品入りお楽しみ袋を買ったことが多いはず。インターネット上でも、言っちゃいけないはずの効能を堂々とうたった健康食品が売られていることがよくあります。

 法律に違反する可能性はあるけど、意外に普通に行われている――こういうことが、健康美容分野にはしばしば。だからこそ、私たち自身がキャッチコピーやセールストークの向こうにある真実を見極める力が必要なのです。

著者:吉田武史(よしだ・たけし)

一般財団法人日本薬事法務学会理事長、吉田法務事務所代表、行政書士、薬剤師

東京理科大学薬学部在学中に行政書士の資格を取得し、吉田法務事務所を開業。卒業と同時に薬剤師の資格も取得し、薬事許認可業務の代行申請、コンサルタント業務に従事。医薬品法務、化粧品法務、健康食品法務などを専門とし、現在は、薬事法専門の法務家として、国内外で業務を展開。講演会、執筆活動も精力的に行う。
(「化粧品と食品をめぐる表示・表現の規制を知る」を監修)

著者:吉田武史(よしだ・たけし)

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