Kenbiコラム
第18回
植物が自分を守るために作り出す色素や苦み成分ポリフェノール。これをとると、美しい肌や健康の維持に役立つことがわかってきました。さて、では私たち日本人はどんな飲み物からポリフェノールを最も多くとっているでしょう?
(1)緑茶 (2)コーヒー (3)紅茶 (4)野菜ジュース [8月5日]
- (2)のコーヒー。2009年にお茶の水女子大学教授の近藤和雄さんが発表しました。
- その場所から動いて紫外線や虫といった外敵から逃れられないのが植物。かれらが自分の身を守るために作り出すのがポリフェノール。肌のシミやシワ、がんなどの原因となる活性酸素を消去する代表的な抗酸化成分で、野菜や果物に豊富に含まれることが知られています。活性酸素は、紫外線やストレスなどによって体内で発生するので、その害を打ち消し、美と健康を守るためには、ポリフェノールやビタミン類などの抗酸化成分をしっかりとっておくことが大切です。
ポリフェノール摂取にコーヒーと緑茶が大きく貢献
野菜や果物を十分に摂取するのは抗酸化物質だけでなく食物繊維などをとる意味でも重要ですが、緑茶やコーヒー、紅茶など一日に何度も口にする飲み物からどのくらいポリフェノールをとっているかご存知ですか?こんな疑問に答えたのが、お茶の水女子大学教授の近藤和雄さんらの研究グループ。
近藤さんらは、2004年、東京と大阪で10~59歳の男女8768名を対象に、1週間のポリフェノールの摂取量を飲料別に調査しました(アルコール飲料は除く)。その結果、1日当たり平均853mgのポリフェノールを飲み物から摂取しており、そのうち50%をコーヒー、34%を緑茶が占めていることがわかりました(他の飲料は10%以下)。この分析結果は2009年に発表されましたが、研究グループは「日本人の日常的な食生活におけるポリフェノールの摂取量は、コーヒーと緑茶が大きく貢献している」と結論付けています(J Agric Food Chem.57(4):1253-9,2009)。
また、飲み物が持つ抗酸化力は、その中に含まれるポリフェノール量と相関することも確認しています。100ml当たりのポリフェノール含有量はコーヒーが200mgと最も多く、緑茶115mg、紅茶96mg、トマト/野菜ジュース69mg、ココア62mgと続くことからも、"抗酸化飲料"としてのコーヒーの存在感が光ります(図1)。
ちなみに、全日本コーヒー協会の調査によると、日本人の1週間当たりのコーヒー飲用量は、10.93杯(2010年)。1杯140mlとすると、コーヒーから1週間で3060mg、1日当たり437mgのポリフェノールをとっている計算になります。
「ポリフェノールがたくさんとれるなら、これからはコーヒーをもっと飲もうかな」と思った方。砂糖をたっぷり入れて甘くしたり、心臓病のリスクを高めるとしてWHO(世界保健機関)も摂取規制を設けている「トランス脂肪酸」が含まれるコーヒーフレッシュをたくさん使ったりすると、逆に健康や美容を損なう可能性もあるので、飲み方には注意してくださいね。
コーヒーに含まれるクロロゲン酸がダイエットに役立つかも
コーヒーに含まれるポリフェノールの主成分はクロロゲン酸といいます。この成分は焙煎前のコーヒー豆に多く含まれていますが、コーヒー飲料自体に含まれる量でもカフェインより多いことがわかっています。そして、クロロゲン酸を多めにとるとダイエットに役立つ可能性がある、とする研究も登場しています。
この研究では、肥満の30人を2群に分け、一方にクロロゲン酸を多く含むインスタントコーヒー、もう一方には普通のインスタントコーヒーを、ブラックで1日5杯、12週間飲んでもらいました。その結果、クロロゲン酸群は平均5.4kg体重が減少したのに対し、普通のコーヒー群は1.7kgの減少という結果に。体脂肪率については、前者は27.2%から23.6%に減ったのに対し、後者では有意な変化がありませんでした(図2)。
また、12人の健常者を対象者とした試験では、クロロゲン酸を多く含むインスタントコーヒーは、同じ量の砂糖を入れた水と比べ、血糖値を上げやすいグルコースの吸収を6.9%抑制。さらにこうした効果は、普通のインスタントコーヒーにはないことを確認しました。研究グループは、これらの研究成果から「クロロゲン酸を多く含むコーヒーは、体重や体脂肪の減少に役立つかもしれない」としています(J Int Med Res.35(6):900-8,2007)。
この研究で使用されたクロロゲン酸を多くコーヒーは、通常のコーヒーに使用されるアラビカ種に加え、クロロゲン酸の含有量が高いといわれるロブスタ種を採用することで、クロロゲン酸を90~100mg増量しています。実際に、クロロゲン酸を強化したコーヒーも市販されているので、気になる人はチェックしてみて。
手放しで「コーヒーを飲むと健康になる」とは言えないとする専門家も
ただ、コーヒーの健康効果に関しては、大規模な疫学研究など様々な報告がありますが、場合によってはマイナスの作用もあるという研究もあり、「手放しで美容や健康のためにいいと薦められない」とする専門家もいます。
プラスの効果としては、全がんリスクを減少(BMC Cancer.11:96,2011)、肝がん罹患リスクを減少(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev.1746-53,2009、J Natl Cancer Inst. 97(4):293-300,2005)、糖尿病の発症リスクを減少(Endocr J. 56(3):459-68,2009)などが報告されています。
一方、マイナス効果の報告も。カフェインの代謝が遺伝的に遅い人では、コーヒーの摂取により非致死性の心筋梗塞のリスクが高まる(JAMA.295(10):1135-41,2006)、コーヒーを飲む習慣がない人がコーヒーを飲むと虚血性脳卒中のリスクが高まる(Neurology.75(18):1583-8,2010)、1日1杯以上コーヒーを飲む人は、ほとんど飲まない人に比べ膀胱がんの発症リスクが高くなる傾向があり、特に非喫煙者では関連性が高い(Cancer Sci.100(2):294-91,2009)、などが報告されています。また、カフェインの摂取は流産や胎児の発育不全などの可能性を高めるとの発表もあり(Eur J Epidemiol.25(4):275-80,2010、BMJ 337:a2332,2008など)、英国食品基準庁は、食品から摂取するカフェインの総量の上限を、妊娠している女性の場合は1日200mg(コーヒーだと2~3杯相当)にするよう勧告しています。
抗酸化食材のパワーを味方につける方法は?
いずれにせよ、健康と美容のためには、いくら抗酸化成分が多く含まれるからといって特定の飲料や食材ばかりをとるようなことをせず、バランスよくとりたいもの。"抗酸化飲料"の代表選手がコーヒーや緑茶なら、"抗酸化食材"の代表は野菜ですが、いろいろな種類の飲料・食材を口にするよう心がけましょう。
来る8月27日(土)、東京・赤坂で、おいしく食べてキレイになるための「オススメ野菜と最強レシピ」を紹介する、Kenbiプレミアムセミナーを開催します(主催:健康美容情報認定講座協議会、『日経ヘルス』、『日経ヘルス プルミエ』)。
講師は、野菜の機能性研究の第一人者で、昨年、アークヒルズ(東京・港区)に、抗酸化、解毒力、免疫力といった"野菜力"の大きさを評価した野菜を売る"八百屋"『ベジマルシェ』を開業したデザイナーフーズ社長の丹羽真清さんと健康美容コミュニケーター第1期生の料理家で、オリーブオイルやワインのソムリエ資格も持つ横塚美穂さん。抗酸化力だけでなく、解毒力、免疫力など、女子にとってはうれしいパワーが満載の野菜の力を最大限に生かすための、野菜の選び方や調理法、生活習慣などを「試食付きで」紹介します。
しかも丹羽さんの『ベジマルシェ』は、会場から目と鼻の先! セミナーで野菜の力&レシピを学んだ後に行くのもよし、セミナー前に立ち寄って"予習"するのもよし、野菜の魅力を存分に堪能することができます。
席にはまだ若干の余裕がありますので参加を希望される方は急ぎ、こちらまで。
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